■高齢化社会に向けての課題

 二千十五年には、我が国は四人に一人が六十五歳以上という超高齢化社会に突入することになる。それに合わせて介護保険導入など、福祉行政のあり方が大きくクローズアップされてきている。そもそも、我が国において福祉国家への転換が立ち遅れた背景には、本来公的支援によって行われるべき福祉問題が大家族制度という家庭環境の中で地縁、血縁関係によって全て対応が図られてきた実態がある。

 「介護を家庭から地域で」というスローガンに表わされるように、福祉は社会的なシステムで支援されなければならないという前提が確立されようとしているわけだが、それでは果たしてその"地域"とは一体何処に存在しているのだろう。地域コミュニティの実態化という課題は、高齢化社会をまもなく迎える我が国に切実な問題として降り掛かかろうとしている。

 大家族制度に変わって戦後急速に核家族化が進展した。そして、核家族化の進展の果てが独居老人問題になる。特に企業社会という縦社会の中で生きてきた男性は、定年退職後、横社会の地域社会に素直に参加していきにくい。地域に参加できなければどうしても家に閉じこもりがちになり、そのことは体と心の健康を蝕んでいく。また、痴呆の進行を速めることにもなる。そして、独居老人の増大は介護体制の大きな負担ともなり、行財政需要を更に逼迫させていくことになる。

 行財政需要の健全化という観点から見ても、地域コミュニティの実体化は早期に図られなければならない。前期高齢者から後期高齢者まで、更にはその生活をサポートする人たちまでをネットワークした地域を単位とするコミュニティリビングの推進。地域コミュニティへの助走期である定年退職時から参加できる興味参加型の地域コミュニティ社会システムの開発。その様な輻輳したコミュニケーションチャネルを開発することによって、高齢化社会に対応できる地域コミュニティ社会は具体の姿を現すことが出来るようになる。


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