4節.企業社会との連携


1.地域への企業活動の誘導


■その意味

 地域が地域としての健全な姿を維持するためには、地域への何らかの恒常的な資本の誘導が必要になる。芦屋のまちは船場の旦那衆の資力によって閑静な街並みが維持されてきた。しかし、それは自分たちが住む山手の住居地域周辺だけに限られた話であり、費用対効果の意識がはっきりとしている大阪人は下町の商業地域にまでは影響を与えていない。京都のまちはかつては富裕層だった町衆の資力によって維持されてきたが、その町衆の消滅とともにいたって普通のまちに変わりつつある。それに引き換え、南部の伏見のまちでは京都とは違うもう一つの文化圏を目指して高質なまちづくりが進行しているが、これには地域産業と呼ぶには余りに巨大すぎる月桂冠という地元企業が良質な旦那役として存在していることが大きく影響している。

 このように、地域の健全性の恒久的な維持を図るためには地域に対する何がしかの恒常的な投資行為が不可欠な要素として求められるが、それを地域住民や地域産業に義務として要求することは難しい。今でもコミュニティが頑強に存在している田舎の地域では、村の精神的支柱である寺を維持するために、世帯数のさほど多くない集落が毎年多額の維持費を出し続けているという例もあるが、旦那衆が消失して一億総中流化した時代に、地域コミュニティに触れた経験のない都市部の住民にその様な負担を強いることは難しい。 

 従がって、伏見のまちのようなケースがレアケースである以上、適切な外部資本の導入が地域活性のための必要な手段となってくる。地域がポテンシャルのアップを図るためには、何らかの外部資本の導入が向上に向けてのセルモーター役として不可欠なのである。

 また、企業の側から見ても、企業にとって静止は死(倒産)を意味している。不況なら不況なりに新たな活路を求めるのが企業活動の必然である。生活に視点を合わせ、地域貢献の中に新たな産業目標の定立を図る。高度経済成長期の資本と組織の力にものをいわせた問答無用の対立構造の世界から、企業と地域の活性を共に展望できる協働の地域戦略の中に、混迷する企業社会の一つの新たな活路を見いだすことが出来る


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