■企業活動誘導のための環境整備策の必要性

 しかし、地域に対する適切な外部資本の導入の必要性が各主体に認識されたところで、簡単には地域と企業と行政の連携は実体化しない。現状において、この三者の間には殆ど共通言語がないのである。

 地域には顔が無く、一枚岩になれる構造にはない。従がって、誰が地域を代表しているのか、交渉当事者は誰なのか判然としないし、それ以前に生活者の論理は企業人にはいたって分かりにくい。また、地域には企業に対して被害者意識のようなものもあり、大きな組織に対して強く地域エゴを主張したがる人間も少なくはない。企業の論理からすれば、いきおい「地域はややこしい」「地域と口をきくと損をする」ということになってしまう。

 行政は営利追求の企業姿勢に対して理解はしているが、地元や社会的弱者の保護という建前が影響して積極的には協働しがたい部分がある。また、企業活動に対して一定の許認可権を握っているために、官尊民卑の感があることも否めない。又、対地域という観点で見ると、大枠で言えば、自治体活動は地域への奉仕を目的としており、地域の生活者には当然貢献したいと考えている。しかし、地域住民を標榜して声を大に話す人間から素直な生活者の意見を聞けることは珍しく、企業と同様にある部分では地域の難解さも熟知しており、手放しに地域に迎合しようとしているわけではない。

 このように、地域と企業と行政の間には、それぞれに深くて越えがたい溝が存在している。そして、それぞれの主体の意見の調整や異なる言語の通訳を努める役は、地域の活性を自らの組織の活動目標とする地方自治体にしか求めるところはない。地方自治体職員が地域と企業の間に入って、両者の意見と権利の調整を図りながら地域への適切な外部資本の誘導を行なうことが望まれるのである。


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