2.マス経済の今後の動向


■経済のグローバル化に伴う富の偏在の極大化


戦後五十年の我が国の経済ネットワークは、東京を頂点として全国をつなぐものだった。東京を中心とする経済一元化社会は、純化を極めながらバブル経済を迎え、そして崩壊へとつながっていった。そして、バブル経済崩壊後の再構築は世界とネットワークした市場経済の流れの中で図られようとしている。世界を席捲している欧米型の市場主義にどうコネクトしていこうかという流れである。

経済のグローバル化は情報産業の進展によって可能となった。そして、世界規模での情報化を押し進めるのに大きく貢献したのがコンピューター産業の成長である。しかし、コンピューター・ネットワークによる世界経済の一元化は投資家サイドに立つ国が周辺後進国から大きな利益を一挙に吸い上げるシステムであり、それは世界規模での富の偏在を大きく助長することにしかならない。

生産から供給に至る大小様々な従来の産業ネットワークには、流通の各段階に受益者が点在していた。しかし、世界をたった一つのネットワーク・チャネルで結ぼうというこの新たな経済システムにおいては、今まで各段階で存在していた受益構造は全てスポイルされ、分散していた富の大半はたった一ヶ所のネットワーク・チャネルの胴元に集積されることになる。

 世界的な規模での情報一元化の強力な推進役として、今や花形産業化したコンピューター業界を見てみよう。殆どの産業が次なる生産目標を見いだせず失速状態にある中で一人大きく躍進を続けてはいるが、その割には携わる人間に受益者が少ないのではないか。また、経済全体の生産性も高まっていないのではないか。大きな話題を次々と提供しているコンピューター業界ではあるが、ひょっとすれば、それは明日が見えない産業社会の中で、救いを求める企業人たちが皆で担ぐ幻想の御輿なのかもしれない。


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