■ノンデベロッパー・デベロップメント

 従来からの面開発事業には中核をなす大規模テナントの進出が不可欠であり、そのキーテナントを中心に物販、飲食、宿泊などの定番の事業が組み合わされていた。しかし、地域に望まれる機能が概ね充足するようになり、且つ地価の上昇による含み益も期待できなくなった中で不況だけが進行する昨今の経済状況下では、この軸となるキーテナントの進出意欲の大幅な減退によって、開発計画は全国各地で軒並みとん挫するようになっている。

 このような状況を打開するためには、キーテナントという大手の資本力に頼らない事業手法の案出という考え方が必要であり、そのためには中小の事業者を新たな編成手法によって集積させ、その集積をもってキーテナントの代替策とするという方法が有効であると考えられる。この手法が可能になれば、開発行為を、金太郎飴ような現在の全国画一の展開から、地域性に溢れた多様な展開へと変換することも可能になる。

そもそも、従来の開発事業は土地の含み益に最大の評価ポイントがあり、その上で営まれる事業活動は、莫大な赤字を生む恐れがない限り実はさほど問題とされることはなかった。従がって開発事業参画企業は、当然のごとく、地価の含み益を期待して莫大な開発コストを寝かせることが出来る大手企業でしかなくなる。又、開発推進主体も、莫大な建設コストで膨大な空間を用意するだけで、その中で営まれる事業活動をランニングレベルでサポートするという発想は無かった。

地価の含み益が期待出来なくなってしまった以上、今後の開発計画を組み立てるためには、集めようとするテナント候補企業群のそれぞれの事業成立性をサポートすることが出来る新たな機能の開発が必要になる。地域共生型事業を具体のものにするためには、誘致事業が健全に推移することをサポートするためのソフトシステムが必要であり、更に言えば、それを運営するシステムサポーターの存在が求められなければならない。

 製造業、卸売業、小売業、そしてサービス業と、どの業種を例にとっても事業の健全化のためには多くの克服すべき課題がある。従がって、消費者情報、商品開発技術、異業種間の水平分業、流通販路、販売などに関する課題の解決をサポートしてくれる何らかの機能が開発事業の中に含まれていれば、それは進出を検討する企業にとって非常に大きなインセンティブとなる。今後の開発事業の推進にあたっては、様々な業種毎の課題・問題点に対応しながら各々の事業活性に貢献出来る、事業サポートサービスの機能が内在化されていなければならない。

 地域における開発行為を単独の大手資本に無条件に依存するのではなく、開発地域の特性を見極めた上で、地域活性に貢献度の高い業種に照準を合わせ、その業種群の事業成立性に貢献力のあるサポートシステムを開発して開発計画の中に敷設するのである。テナント企業進出のための環境整備策となるビジネスサポートシステムを内包させたこのような"ノンデベロッパー・デベロップメント"とも呼べる開発の考え方こそが、低成長時代に対応出来る新しい地域開発手法であると言うことが出来る。




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