■変わり者を活かそう
 
何処の会社にも必ず変わり者はいる。彼らは会社の中で仲間達からエイリアンのように見られている。しかし、実は彼らこそが、時代の変革期に組織をあるべき方向に導くことができる先導者の役割を担うべき人間である場合が多い。前述した、人間の集団を構成する二:六:二の最も優秀なグループに属す人たちなのである。但し、変わり者の中には稚拙な自分の意見に固執しているだけの人間も少なくはない。したがって、変わり者すべてが必ずそのような資質を有しているとは言わないが。

 優秀な変わり者の人たちを観察してみると、第一に彼らは過去の事実の最大公約数にしか過ぎない常識というものに惑わされることなく、未来に対する自己の信念を確立させていることに気付く。そして社会のありようも正しく認識している。したがって日々の業務に対して下す彼らの判断に迷いはない。あらゆる局面に自らの哲学に基づいた判断を優先させている。

 しかし、経験則に基づく安易な全体主義が蔓延する企業社会においては、そのような彼らの言動は単に協調性が低く、自分勝手な行動を繰り返すものとしか映らない。企業社会の常識の中に自己の精神を埋没させて、赤信号を皆で渡ることしか考えていない多くの会社人間たちから見ると、彼らの言動は全く意味不明で我を押し通そうとする単なるわがままな行為としか思えない。したがって多くのマネージャーは彼らを組織の統一性を乱す厄介者として捉えがちになる。

 しかし、どのように上司が叱責しようとも、周りの同僚達から中傷されようとも、彼らはその姿勢を崩さない。なぜならば、自己の信念に基づいて意思決定を下している"変わり者"は、既に本質に目覚めている人間なのだから。自分たちが下す判断は自らの組織にとっての必然の未来であることを彼らは確信している。しかし、常識という名の誤った流れに組しようとしない彼らは、その結果五十代になる頃には概ね子会社などに出向して社会の第一線から消え去ってしまう。それは、現在の企業社会の経験則に基づく常識上位のマネジメント体系の中では、彼らの未来に対する哲学を受け止めることができる環境など何処にもないためである。

 無機質で没個性的な企業体質からの脱皮を願う企業組織にとって、変わり者は今や組織にとって重要な経営資源である。彼らを理解できない、または、ヒューマニティに依拠した彼らの思想を組織運営の中に組み込むことができないマネージャーにこそ問題がある。二十一世紀型企業を目指す組織には、彼らの哲学と知恵を組織に活かすことができる、新たなマネジメント・システムの開発が図られなければならない。



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