V章.地域産業従事者たちよ
地域産業は地方の時代の基幹産業




■はじめに

高度経済成長期の産業規模拡大の時代を、量と資本を整えることが出来なかったために東京中心の産業ネットワークの輪からスピンアウトしてしまった地域産業。以来、地域産業は日本の驚異的な経済成長の流れと反比例して、限りない衰退化の道を歩み続けている。

 地場製造業が集積している地域の住民が集まるまちづくりのワークショップの席上などで、「まちなかからあのくすんだ工場群が出て行けば、自分たちの地域はもっと良くなる」といった主旨の話を時折耳にすることがある。同じ地域に存在しながら生活と産業の間には何のコミュニケーションも存在せず、互いが互いの定住阻害要因になってしまっている。果たして、地域産業は地域生活者にとって単なる嫌悪施設でしかないのだろうか。

 地域の自立性の強化を図るためには、地域における産業の存在は不可欠な要素として求められなければならない。地域産業は何のために地域で生活者と共存しているのか。その意味と意義の再構築を図り、地域のための地域産業という位置づけの再定立を図るのである。資本の論理に負けた敗者の集団という位置づけのままでは、経済行政が行う地域産業支援策も、さながら社会的弱者の生活支援を行う福祉行政と同種の意味合いでしかない。

 地域で生活と渾然一体となって産業活動を続ける地域産業の盛衰の動向は、地域全体の活性や不振に直接的に大きな影響を及ぼすことになる。地方の時代を迎えるにあたって、地域の自立性強化のためにも、また、企業社会に過度に集中してしまった労働人口の適切な分散化を図るためにも、私たちは地域における産業の望ましいあり方を、地域生活を豊かにするための生活支援機能という観点から捉え直さなければならない。


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