3.活性化に向けての事業戦略立案の考え方


■具体的な数値目標の設定

商店街組織は向こう三軒両隣の町内会的組織か、それとも事業家集団組織か。この二つの認識の混在が商店街における具体的な活性化事業戦略の立案を難しいものにしている。そしてその結果、集客性と社会性の折衷案的な、具体的な到達目標が見えない中途半端な地域コミュニティ事業が幅を利かせることになってしまう。

しかし、商店街を構成している各個店の存在が販売収益に依存している以上、活性化戦略の基本は更なる収益性の追求以外に求めるところはない。そして、その更なる収益性の追求は、更なる集客力の向上に求められる。この時に社会性という視点が必要になる。集客数と販売額の間には必ず一定の相関関係があり、地域社会に望まれる社会性の高い展開が収益性向上の元となる集客力の向上を生むのである。

企業経営者を中心に全世界に百二十万人の会員を持つ世界的な社会奉仕団体である「ロータリークラブ」には幾つかの奉仕目標が組織の活動目的として掲げられているが、その中でも「職業奉仕」という奉仕部門が「ロータリーの金看板」として最も重要視されている。金銭を得るためだけの自己目的化された営為として職業を捉えるのではなく、自らの何らかの産業技術によって社会の要請に応える有償の奉仕行為として捉えているのである。この「自らの職業を通じて社会に奉仕しよう」という職業奉仕の考え方こそが、地域生活を見据えた販売活動によって地域生活の向上に貢献し、それをもって自らの更なる商業活性に帰結させていこうとする"もっと儲かるまちづくり"の基本方程式なのである。

活性化に向けての商店街の事業戦略は、単に抽象的な社会奉仕論から組み立てられるべきものではなく、より望ましい地域生活の実態化に向けての誘導目標を具体的な販売目標数値に置き換えて把握することによって構築されなければならない。そして、定立された具体的数値目標に向けて、各店舗が連携しながら地域の消費生活を誘導するのである。

そうした、地域特性と誘導目標の数値的理解は、県市レベルのマクロ消費性向を記した商業統計結果と商店街の独自集計による自地域の消費性向との品目別のバランスの誤差から把握することができる。衣服、飲食料品、生鮮品、米穀類、家具、家庭用器具などの広域での消費性向と、自地域のそれとはどう異なっているのか。そして、その差は自地域のどのような地域特性に根差しているのか。また、望ましい地域消費生活のありようはどの方向に求めることができるのか。

そのような地域理解の下に、具体的な品目別数値目標の設定に基づいて、バランスのとれた望ましい地域生活の具現化に向けての消費生活の誘導を商店街全体の事業戦略として図るのである。


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