■地域生活活性誘導に向けての数値目標を超えた展開

商業と生活の関係を一言で言い表せば、商業は生活の結果論でしかないということになる。地域商業の活性は地域生活の活性が図られなければ決して具体的なものにはならず、生活が沈滞している地域での商業活動は、当然のことながら沈滞したものにしかならない。したがって、地域商業の活性を企図したときに必要な視点の一つは、地域生活の立体化、躍動化の支援自体を一つのビジネスとして見なすところにある。地域商業の活性化に向けての環境整備策として、地域生活の躍動自体を商店街として商うのである。

活き活きとした地域生活を誘導するために、地域生活の立体化のために望まれるサービスを商店街組織で商う。そして躍動的になった地域の生活は新たな生活シーンを創り出すようになり、そのことは又新たな購買ニーズへと繋がっていく。そうした戦略的な活動を推進する主体は、先に述べた、組織的活動を展開できるようになった商店街内株式会社などが妥当と思われる。そうした推進主体が地域団体や地方自治体などと連携しながら、様々な角度から地域生活の躍動の誘発を商いとして展開するのである。

地方との連携による新たな食材をベースにした料理教室や、アグリ・ツーリズムの展開。中高年を対象としたカルチャー・スクール事業。主婦の趣味活動の活性を誘導できる、主婦が作る趣味商品の販売代理事業。地域産業が開発した実験商品の展示、販売代理事業や、余暇生活・福祉需要に対応した様々な情報提供等々。地域の様々な潜在エネルギーの顕在化と交流を促進することによって、生活に関する様々な財と情報が交錯するカーニバルとしての商店街づくりを目指すのである。

しかし、これらの活動を自分たちの手の内だけで企画から、渉外、運営を行おうとしても、成熟社会の中で生活の質の高度化欲求を募らせつつある周辺生活者の要求するクオリティレベルにはなかなか達し難い。まちづくり行政や、生涯学習を始めとして社会に開かれた環境づくりを推進する大学。地域での新たな展望をもくろむ企業や、生活産業への転換を図ろうとする地域産業。こうした様々な主体と連携しながら、生活者に対する地域での具体的なオペレーション業務の部分を商店街が担当するのである。また、地域生活の高度化や地域コミュニティの顕在化を誘発する効果を持ったこのような商店街活性化推進事業は、まちづくり行政や経済行政にとっても大いに期待されるところとなる。

そして、こうした活動によって生まれる地域生活の躍動がもたらす新たな生活シーンは、地域商業に又新たな購買ニーズを突きつけることになる。第U章で述べたように、地域生活は地域の生成の流れの中で必然的に性格づけられている。地域の必然を見据えた上で、地域生活をテーマにした様々な活動喚起策をまず第一次のソフト型収益事業として展開し、次いで、躍動するようになった地域生活が要求する新たな商品ニーズに物販事業として応えるのである。地域生活に視点を合わせ、その躍動化やコミュニティの実態化に如何に集客系商業施設として貢献していくことができるかという点に地域商業の未来は係っている。


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