2.地方自治体職員に望まれるスタンス


■補助金行政の発想からの脱却

 施策は行政マンによって作られる。そしてそれが地域の課題に応えた優れた施策だったかどうかの一つの判断基準が補助金の支出状況にある。従がって、行政マンは補助金の支出という部分に拘る傾向が強い。更に言えば、補助金の支出につながらない業務は役所の仕事ではないと考えている役人も少なくはない。

しかし、成熟社会と呼ばれ、社会インフラの整備も格段に進んだ今日、豊かな地域社会の創出に向けて地方自治体としてどのように取り組んでいくかは、既に補助金支出の多寡の問題ではなくなっている。住みよい地域づくりに向けて住民の自助努力を如何に喚起していくか。住民が取り組みやすい環境を如何に地域の中に整備できるかが重要なのであって、そのためのコーディネート力が求められるようになっているのである。補助金はその遂行を側面から支える一つの瑣末な方法論にしか過ぎない。

しかし、数字という分かりやすい基準に拘りたがるのは組織人の、更に言えば人間の悲しい性であろう。補助金は読んで字のごとく、補助するための金でしかない。重要なことは地域住民が良好な地域づくりに向けて取り組んでいける内的自発力喚起のための総体的な環境づくりにあり、補助金施策はそれを金銭的な側面から支える、まさに補助策にしかすぎない。

 また、"金"は人を短絡的な行動に駆り立てる要素も強い。役人が補助金施策に拘ると、それに呼応するかのように、地域からその補助金の獲得を目指す補助金泥棒のような輩が徘徊しだすようになる。商店街を例にとると、来年はどのような補助金制度が出てくるのかに関心の全てが向いている商店街役員は少なくない。そして補助金を獲得してきた商店街役員は地元でヒーローのように扱われる。

 しかしV章で述べたように、商店街振興に関わる補助金支出領域の実態は本質の地域商業活性にではなく、商業活動周辺のまちづくり系に向けたものが中心であって、本質的な地域商業活性とリンクしているケースはむしろ珍しい。自らの地域商業活性の本道を忘れてその様な性格の補助金獲得に血道を上げる商店街の体質こそに、自らを衰退化の道に追い込む一つの背景があるということが出来よう。

 重要なことは地域の必然に対して地域がどれだけ素直に自助努力を発揮することが出来るようになるかということであり、それを資金という面からだけでサポートしようとする補助金施策の発想に本質を見いだすことは出来ない。地方自治体職員は、補助金行政の常識から脱却して、豊かな地域づくりに向けての生活者や地域産業従事者の自助努力喚起のための環境整備や、コーディネートといった知恵の領域に業務の主眼が向かうようにならなければならない。


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