造計画概要

資源やエネルギーの節約という社会的な要請に対して、又環境保全の点からも建物の長寿命化が望まれている。先年、京都で「気候変動枠組み条約第3回締約国会議」が開催され、日本は2010年迄に、1990年比で6%の温室効果ガスを削減する議定書が採択された。これを受けて建築学会は「建築の寿命を3倍にすることが必要不可欠である」との会長提言を発表した。建築に関わる生涯二酸化炭素排出量のかなりの部分を建設段階に排出する為であり、又日本の建物の寿命が欧米に比べて短い為である。本建物については、以上の様な思想に配慮し、長寿命、高耐久性、高耐震性をめざして以下の様な措置を採用した。

1.「鉄筋コンクリート造建築物の耐久設計・施工指針」に準拠

耐用年数区分 I級(計画耐用年数100年)

表3.2.2 計画耐用年数の標準値とその間の建築物のRC造躯体の状態

耐用年数

計画耐用

建築物のRC造躯体の状態

T級

100年

条件1:耐力性能の低下が生じない(多くの主要なRC部材について鉄筋のさびによるひびわれが生じない)。

条件2:供用性の低下が生じない(日常安全性および建物使用上の基本的機能が損なわれない)。

条件3:計画耐用年数を低減させる放置しえない劣化が生じない。

U級

65年

V級

30年

(注) *:設計時に設定された計画修繕・日常維持管理を行うものとし、上記の3条件を満足すること。

部材の設計

1.所要のかぶり厚さが確保できるよう鉄筋の交差部、継手、端部定着部も考慮した断面寸法とする。

2.コンクリートの打込み・締固めが円滑に行える断面とする。

3.耐久性上、特に有効な対策を講ずる場合を除き、部材の最小断面は、外壁15cm以上(I級は18cm以上)、スラブ13cm以上(I級は15cm以上)とする。

4.設備配管類を埋め込む場合、ダブル配筋ではその内側におさまるような断面厚さとし、シングル配筋では、配管類のかぶり厚さが鉄筋の最小かぶり厚さと同じになるような断面厚さとする。

配筋

1.配筋は、鉄筋の交差・継手・定着部分・フック・折曲げ部分を考慮して所要のかぶり厚さが確保できるように設計する。

2.鉄筋相互のあきは、粗骨材最大寸法の1.25倍以上、かつ25mm以上、かつ丸鋼では径、異形鉄筋では呼び名の数値の1.5倍以上とする。

3.配筋は、コンクリートの打込みが容易に行えるよう、つか締固めに必要な棒径の内部振動機を挿入・操作できるように設計する。(I級では、さらに打込み用シュート、パイプの挿入孔を設けることができるようにする)。

かぶり厚さ

設計に用いるかぶり厚さの最小値は以下による(単位mm)

部位

耐用年数区分U級

耐用年数区分T級

土に接しない部分

屋根スラブ

床スラブ

非耐力壁

屋内

屋外

30

40(仕上げあり30)

30

40(仕上げあり30)

(壁は、+10)

柱・はり

耐力壁

屋内

屋外

40

50(仕上げあり40)

40

60(仕上げあり50)

擁壁

50

60

土に接する部分

柱・はり・耐力壁

スラブ・基礎・擁壁

50

70

60

80

塩害劣化外力

 S4、S3

 S2

 S1

(防錆鉄筋)

70(仕上げあり60)

標準値(+仕上げ)

(防錆鉄筋)

90(仕上げあり70)

標準値(+仕上げ)

2.高耐震割増融資基準準拠

  設計用地震力を1.1倍とする(Co=0.2×1.1=0.22)

3.部材(柱、大梁)の耐震性向上対策

先の阪神大震災でみられた繰り返し過大地震入力(レベル2を上まわるレベル3相当)に対し塑性ヒンジ域(柱頭、柱脚各々1D間)のコンクリートを保護し、十分な変形能力(靱性)を得られる様、次の様な配筋方法を用いた。

i)フープ、スターラップに圧接閉鎖型筋を用いる。

ii) 柱フープについては各階共柱頭1D、柱脚1Dの範囲内はコンファインド拘束筋を入れる(ピッチ@50)

iii) パネルゾーンはフープとしてD16@100とし圧接閉鎖型筋を用いる