北野町神戸山の手・異人館共生プロジェクト

北野コーポラティブハウス


「異人館」と呼ばれる洋風建築が立ち並び、ノスタルジックな街並みが美しい、神戸・北野。 
神戸港の開港以後、たくさんの外国人たちが北野に移り住み、異国情緒あふれる文化がはぐくまれてきた。しかし、文化的価値のある異人館も、戦災や老朽化、阪神・淡路大震災などでその数は減り、今では現存するものも60棟ほどとなっている。

最近では伝統的建築物に指定されていた建物(旧ペルシャ館)が放置され、損傷が激しくなり伝統的建築物指定を解除される事例が生まれるなど、北野の豊かな街並みが急速に失われる危機に直面している。
本事業は、山本通りの北に東西に走る道路と、北にのびる細い道の交点の東に南面して建つ 異人館(ボリビア領事館) の再生と、これを望む4区画の敷地からなる戸建て分譲事業である。

 

この異人館(ボリビア領事館)は伝統的建築物に指定され、阪神・淡路大震災以後全面補修されていたものの構造などの傷みが激しく、今にも崩れそうな状態だった。そこで徹底的な調査・修復を行い、そのまま住むことができる状態に再生した。
その経緯は 「北野異人館再生」 で詳しく紹介している。

 

伝統的建築物に指定された異人館を望む今回の計画では、この立地の持つイメージを生かしつつ、美しいと言われている伝統的な街並みがそうであるように、多様性と調和のバランスがとれた街並みを実現することを目指した。
具体的には、1件1件が異なるコンセプトに基づきプランニングすることで、住み方の多様性に対応し、かつ建物形状の多様性を確保している。一方で外観の仕上材を共通のものとすることで街並みとしての調和を保っている。

壁面線は奥に行くに従って前進し、異人館を取り囲む路地空間を演出している。
全体性を強く感じさせすぎる街並みは、時として各住戸の独立性を損なう印象を与える事がある。ここでは、ゆるやかなルールにより統一感のある街並みの形成 を意識しつつも、プランニングと形状において個々の多様性を主張することで、独立性を感じ取ることが出来るよう配慮している。

このように、異人館と共存する街並みを意識して計画することで、地域の持つイメージを生かし強化される事を期待している。

 

伝統的な街並みにおいて構成されるルールは本来風土特性に基くものである。我が国では様々な技術革新により、風土の影響を超えた汎用性のある工法が様々に 存在している。しかし、それにより街並みを統一するルールが失われ、街並みが雑多になってしまった弊害が生まれた事も否めない。
ここでは、外壁仕上げと開 口部材を地域イメージの核である異人館に合わせて統一すると言う仮想のルールを設定し、これに基き計画している。それぞれに自然素材を採用する事で、年月 とともに街並みは風合いを増し、魅力的になることを期待している。また、将来個別に建替え等により更新されることがあっても、屋根と開口部の仕上げをこの ルールに合わせるだけで統一感は維持される。

・外壁イメージ
異人館の外壁に合わせ塗り壁とした。
珪藻土に統一する事で街並みとしての統一感を演出し、年月とともに素材の持つ風合いを増す。

・開口部イメージ
木製サッシとペアガラスを採用する事で開口部がヒートブリッジとなることを防ぎ、居室の断熱性能を向上させるだけでなく、外観的に当初から味わいのある風合いを演出し、年月とともにその深みを増す。

本事業は潟[ロ・コーポレーションによる戸建て分譲事業です。
キューブが提案した基本計画及びデザインコンセプトに基き事業化されました。

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