審査講評

2000年7月20日
「復興かちづくり型分譲住宅」設計コンペ 審査委員
遠藤剛生 高田 昇 竹原義二  
垂水英司 室崎益輝 (五十音順)


1.総評
 今回の設計コンペにおいては、予想を大きく上回る409件の応募登録、169件の作品の応募を得た。応募者の方々の復興まちづくりへの関心の高さ、当設計コンペのテーマへの共鳴が感じられる。
 応募された作品を通じて、「都市における住宅の独立性と共同性」、「個人とまちの関係」をどう空間化していくかという過大に多くの人がチャレンジした点に社会的な意義が認められる。一方で「ミニ開発」としてすぐにでも住宅供給可能なリアリティを重視する提案と、理念的な面を重視する提案の双方が見られたが、その両面のバランスある統一こそが求められているものであろう。いずれにしても、入選作品は、かなりの力作が数ある中から、選ばれたものである。
 審査にあたっては、計画の基本とデザインの本質を追及した空間の構成がなされていることを前提とした。下町である長田東部地区において、「都市」「自分たちの住宅地」「それぞれの住宅」「住宅に住む一人一人」のそれぞれに対して、新しい生活像を生みだす可能性のある空間の提案がなされていることが評価ポイントとなった。同時に、コーポラティブ方式での供給が企画されていることから、住戸配置・住戸プランの双方について、自由度の高い対応が期待できることも重視された。
 入選となった7作品は、いずれも独創的なな新しい提案であるとともに、現実に事業化の可能性をもつ計画であり、地域的な住宅ニーズに対応できるものとして選ばれた。

2.最優秀作品
 空間デザインと生活デザインの両面で質の高い、独創性をもつ作品であり、計画の可変性・自由度が高く、コーポラティブ方式に対する深い理解が見受けられる空間構成であるとともに、場所性をよくとらえた提案である。
 住宅地内の豊かな外部空間がまちに対しても開かれており、居住者にとってもまちにとっても望ましいものとなっている。また、個々の住宅の外観が多様でありながら集団としての秩序をもつものとなっており、さまざまな人がお互いに理解しあいながら住む下町のよさを創出しうる提案となっている。この作品が実現することによって、長田東部地区のまちづくりに大きなインパクトを与えるものと期待される。