マンション管理・知恵バンク構想
■マンション管理の背景
現在、マンション管理において生じるトラブルの対処法について、管理組合等が相談できるような環境が十分に整っておりません。というのも、(財)マンション管理センタ−等公的機関が発行する本や、弁護士等が監修した本で、基本的な流れや法的な考え方を知ることはできるものの、実際の現場における工夫や対処方法を教えてくれるものはほとんどありません。他の管理組合における状況を知る方法もほとんどなく、実際の現場における対処方法のノウハウが蓄積されていると考えられる管理会社や設計事務所等の専門家に相談しようとしても、あまた有る専門家の中で、良い専門家を選定するための客観的指標が全くありません。トラブルへの対処法を相談するのに良い専門家とは、問題解消能力の高い専門家であり、この能力は、簡単に調べる事ができる会社の規模や企業系列、財務力等から判断できるものではありません。 公的機関が一般相談窓口を設けている場合もありますが、このような窓口も公的窓口として対応できる限界があり、、具体的にトラブルへ対処する為に専門家を紹介しようとしても、本来は立場上特定の専門家を紹介することができません。従って、トラブルを抱える管理組合は、運を天にまかせて、身近な評判のみを手がかりに、縁のあった管理会社や設計事務所等の専門家に相談せざるを得ないのが現状です。その結果、運が悪い場合は、そのことで、さらに新たなトラブルに管理組合が巻き込まれるような不幸な事態もおこっている模様です。
■マンション管理・知恵バンクの構築
このような現状の改善策として、私共はマンション管理・知恵バンクの構築を提案しております。
知恵バンクでは、まず相談者からのトラブルを公的機関が整理し、管理会社や設計事務所等、複数の専門家に質問と言う形で投げかけます。専門家は各々の判断で対応策を回答し、その回答内容を公的機関が並列に整理して、相談者に開示します。
相談者は同一の問題に対し、並列に整理された複数の専門家による複数の回答を比較検討することができ、自らの判断の拠り所とすることができます。また、相談者は的確な助言をしていると判断する回答者に対して直接問い合わせることができ、その後業務を委託することもできます。この仕組みは、回答者による本質的な良い回答が、相談者による高評価につながり、回答者が相談者より直接問い合わせを受けるきっかけを生みます。相談者はまさに頼りになる専門家を探しているので、回答者にとっては絶好のビジネスチャンスとなります。このように、具体的な回答を通じて問題解消能力の高さをアピールすることが受注につながるので、各専門家はより良い回答を行おうとする好循環が生まれます。また、他の専門家の回答内容をお互いに知ることで、業界全体のスキルアップにも繋がります。
マンション管理・知恵バンクを通じて質問と回答を重ねることで、開示される情報は客観的で多面的なものとして蓄積されていき、継続すればするほど、より有益なものに成長していくことが期待できます。
具体的事例として、私共では神戸市住宅供給公社が運営する、神戸市すまいの安心支援センター「すまいるネット」において、この構想に基づく冊子を企画・編集して作成致しました。現在までに「マンション管理 私の知恵 みんなの知恵 入門編/管理組合編/実務編@/実務編A/日常トラブル編」の計5冊が発刊されており、神戸市すまいの安全支援センター「すまいるネット」で無料配布しています。現在直面しているトラブルに対応する冊子でなくても、この冊子を読む事で、各専門家の問題解消能力を読者毎に判断する事ができます。この冊子は、いずれかの専門家に何らかの相談をしようと考えている管理組合にとっても、非常に有益な手掛かりを与えてくれることでしょう。そして、本来立場上特定の専門家を紹介することができない公的窓口も、この冊子を紹介することで、個々の管理組合に管理会社選定を検討する手掛かりを提供することができます。このような役割こそ本来公的窓口が行うべき役割だといえます。
私共では、将来的にはインターネットを活用して、自己増殖的に知恵バンクの内容の充実が図れるようなシステムの構築を目指しています。