脱「画一化」へ
まちなかに個性の8棟
建売住宅に新たな試み

朝日新聞2002年12月18日


建築家8人が建売住宅を競作する「まちなか住宅コラボレーション」が、北区で進んでいる。住宅会社「ゼロ・コーポレーション」(本社・北区)が主催し、11月に8棟の基本設計が終わった。これからの街並みを考え、「安っぽくて画一的」と言われることも多い建売住宅のデザインを改善する試みだ。

建築家と住宅会社
京の街並み考え連携


● 2者手を組む
敷地は地下鉄北大路駅から徒歩3分にある役2300平方メートル。ゼロ社が17区画の宅地を造り、8区画の設計を建築家に頼んだ。奈良女子大の吉村篤一教授(住環境デザイン学)ら京阪神で活動する8人が引き受けた。
こうして住宅会社が建築家と手を組むのは珍しい。設計料がかかって販売価格が上がるうえ、だれにでも受け入れられるデザインになりにくいからだ。ゼロ社は「利益にこだわらず、新しい京都の街並みを生み出したかった」という。
一方、建築家は施主の注文を受けて設計する事が多く、どんな買い手がつくか分からない建売住宅はあまり手掛けない。吉村さんは「建売住宅にも建築家がかかわっていかないと、住まいや街並みが良くならない、という問題意識があった」と話す。

● 持ち味も調和も
住宅の模型には個性的な建物が並ぶ。
 吉村さんは中庭を中心に居室や寝室を配置し、大きなガラス窓を設けて外からの透明性を高めた。「狭い敷地だが、広がりが感じられる空間にした」
 それぞれの建築家が持ち味を出す一方、街並みの調和も図った。8人が話し合い、@外壁と屋根は黒か灰色にするA建物の正面に軒を出すB敷地の境に共有の木を植える−などを決めた。京都らしく、町屋にならった中庭も多い。

● 将来のモデル
8棟の延面積は101〜125平方メートルで、価格は5千万〜7千万円。普通の建売住宅よりも高いが、建築家の設計にしては安いという。来夏には完成し、売り出される。
ゼロ社の金城一守社長は「建築家と話し合いながら街づくりを進めることに意味がある。まだビジネスとしては成り立たないが、将来のモデルにしたい」と話す。
全体のまとめ役として参加した、龍谷大学法学部の広原盛明教授(都市政策学)は「建築家が設計したデザイナーズマンションが売れているように、高くても人とは違う家に住みたいという人は増えている。戸建てでも、同じような動きが広がるのではないか」と言う。