都市は甦る
コーポラティブ/その可能性・・・3

住宅流通新聞 2003/10/31


コーポラの活用@ 合意形成へ従来手法踏襲せず

プロジェクト2 「スクウェア六甲」
空洞化と老朽化、高齢化とインナーシティ問題にさらされた商店街の長屋を地権者の希望もありマンションに復興した事例。事業採算からキューブが初めてコーポラティブを活用したが、合意形成の重要さと困難さを知る事になったディセット渦が森の経験を生かし、参加者が喧々囂々(けんけんごうごう)の議論に陥り紛糾を招きかねない従来型の手法を踏襲しなかった。


 阪神・淡路大震災で六甲道の八幡商店街沿いの二階建て店舗付住宅五軒長屋が全壊した。
再建計画は一年半余り検討した結果、共同建替え案で決定。新しく十二戸の共同住宅を等価交換方式で建設することになった。同社がはじめてコーポラティブ方式による事業として手掛けた神戸市灘区の案件を紹介

−震災当時、八幡商店街の状況は?
■壊滅の中から・・・
 「古い長屋が混在する同商店街は高齢者や廃業している店が目立つようになっていたが、阪神・淡路大震災により、壊滅的な打撃を受けた。老朽化したアーケードが設置されていたが、震災で大きな被害を受け、撤去される事になった。」
「当地は駅に近く、徒歩圏内にほとんどの生活利便施設が存在する商業地域に位置する。しかし、商店街としての活気は既に失われており、従前地権者も住宅として再建することを望んでいた。
再建にあたり様々な方法を検討した結果、等価交換方式で共同住宅を建設することになった。」
−共同化決定後の経過は?
「当初、一般的な共同再建事業と同様にディベロッパー(事業代行者)を誘致して事業を進めようと考えていた。しかし、総戸数が十二戸と事業規模が小さく、販売対象住戸は八戸に過ぎないため、ディベロッパー利益や販売経費を考えると事業性が低く、好条件でディベロッパーを誘致することが困難だった。そこで、住宅購入者自らが事業を行うコーポラティブ方式の採用を考えた。
ディベロッパー在籍時に、土地の購入から設計、企画、販売営業から引渡まで、マンション分譲に関る全ての部門における経験があったので、一般的な事業の内容は理解していた。しかし、コーポラティブに関しては全くと言ってよいほど情報を持っていなかったので調べるところからはじめた。
−コーポラティブに関して手探りの状況といっても過言ではない。
■手探りの状況
コーポラティブを調べていくと、従来のコーポラティブ方式では、組合員間の合意形成を得る事が難しく、過去にも様々なトラブルになった事例がある事がわかった。
しかし、マンション建替え事業「ディセット渦が森」の経験により、やり方次第で解決できる問題であると確信した。
従来のコーポラティブ方式では、当時者間の直接的な討議を通して合意形成を得ようとする。このプロセスこそコーポラティブと言われる事も少なくない。しかし、このようにすると度重なる会議での討議が必要となり、一般的には数十回開かれるという。これでは時間が自由になる人でないと参加できないし、なにより参加者の負担があまりにも大きい。また、前提となるルール不在の中で議論が行われるので主観の対立が発生しやすくなる。そして、声の大きい人や自分勝手な人に議論が振りまわされがちであり、一般の方が安心して参加するのは困難だ。
■まず前提ありき
−そのために、どういう解決手法をとったのか。
そこで、コーディネーター(キューブ)が予め前提となる(計画の)考え方を提示し、それに沿って事業を進めることにより改善できるのではないかと考えた。コーディネーター提案に対して参加者の意見を反映して進めて行く。参加者間の直接的な討議も極力行わず、アンケートを活用して、冷静な状況で個々が判断できるような環境を作るように心がけた。
このようにする事で事業は予定したスケジュール、予定したコスト(の範囲内で)で進めることが出来、九八年三月に工事着工し、九九年二月に完成した」(つづく)