スケルトン + コーポラティブ・・・
新方式でマンション 関西にも登場。地主、入居者双方に利点
便利な都心のマンションで永住したい人たちの要望に合わせ、建物の骨格(スケルトン)と内装・間取り(インフィル)を明確に分ける「スケルトン型住宅」と「コーポラティブ(建設組合)」方式を組み合わせ、さらに価格を抑えるための特殊な定期借地権を設定した新方式のマンション計画が阪神間でも動き始めた。高齢化や都心の空洞化対策も兼ねたざん新なアイデアだ。 (阪神支局 末益 公一)
これまでの定期借地権付きマンションは、五十年後の解体を前提にしているため、「短命」「期限が近づくと手入れが不十分になりがち」などの問題がある。このため、「都心で生涯居住できる低価格マンションを」という狙いで建設省建築研究所が民間企業と共同開発した。
まず入居者が組合を作り、資金を出し合って百年以上の耐久性のある建物を建設。当初の三十年間これを所有し、地主に地代を払って住む。
三十年後、建物のスケルトンは地主に譲渡され賃貸となるが、入居者は家賃のうち建物の賃料相当分を譲渡金で相殺できるので、さらに三十年間は地代相当分の負担だけで住み続けられる。その後は通常の賃貸住宅となる。
地主が建物を買い取らない場合、入居者は従来通り地代を払って住み、満六十年で建物を地主に無償譲渡する。
借地に建てるので入居者は土地を持たず、スケルトン部分の所有権も期限付きだが、その分安くなる。
一九九六年に茨城県つくば市に第一号ができたため、「つくば方式」とも呼ばれ、関西では兵庫県尼崎市に第一号が建設中。同県芦屋市でも計画が進んでいる。
建物の構造部分と各部屋を明確に分け、配管などは共用部分に通しているので、間取り、内装の自由度が高く、売買も可能だ。大規模修繕の必要性が高まる築三十年の時期に建物の所有権が地主に移るため、修繕や維持管理が円滑にできる利点もある。
入居者側からいうと最終的に自分の資産にはならないが、分譲マンションより安上がりなことに加えて、六十年間、生活様式の変化に応じた暮らしができる。地主側も当初から空き部屋のリスクを負うことなく、長期間安定した収入を得られるというわけだ。
課題は、この方式の知名度が低く、仕組みが複雑なためか、土地を提供する地主がなかなか見つからないことだ。入居者とのコーディネーターになる専門知識を もつ人材もまだ少ない。参加者がそろうまで着工できず、入居まで日時がかかるため、完成したのは全国でもまだ数件だ。九八年には専門家らが中心になって非営利組織「スケルトン定借普及センター」を設立、土地探しなどに力を入れている。
同センター関西支部代表の高田 ・立命館大学政策科学部教授(都市計画)は「資産を残すより利便性を重視して集合住宅を求める人が増えてきた。計画段階からのお付き合いでの質の良いコミュニティーもできるし、都心に人を呼び戻す効果もある。土地さえ出てくれば、潜在需要は無限にあると思う」と話している。
問合せは同支部(電話06-6624-2321、COM計画研究所内)へ