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全国賃貸住宅新聞

2009.8.17

30〜35年目に建物譲渡特約行使の選択可能

安心で快適な60年間の利用を実現するスケルトン定借

長期にわたって分譲マンションに安心して住み続けることは簡単ではありません。日本でもマンションを終(つい)の棲家と考える人が増えてきました。しかし、分譲マンションに安心して長期にわたって住み続ける事が簡単ではない事をご存知でしょうか?

マンションを良好な状態に保つには維持管理が重要

マンションを良好な状態に保つには、マンションの大部分を占める、廊下・エントランス・エレベーターや、そのマンションが立っている土地などの共有の場所(共有部分)を維持管理することが重要です。マンションとして何かをする場合、法律で定められた割合以上の居住者の賛成によって多数決で物事を決定する事が出来ます。逆に言えば法律で定められた割合以上の賛成(合意形成)が得られない場合、何も物事を決定することができないということです。維持管理を行う際も、このルールにのっとって物事を決定しなければなりません。

老朽化とともに必要となる大規模修繕

築年数が30年を超えると、大きな費用のかかる大規模修繕が必要となります。主な内容としては排水管の更新や機械設備の入れ替え等を行います。排水管は古くなると排水中の老廃物が排水管内部に付着し、排水が流れにくくなるため、適当な時期に更新しなければなりません。機械設備は耐用年数を超えると入れ替えが必要となります。これらの工事を行うには、かなり大きな費用が必要となってきます。
このような、将来必ず必要となる維持管理に充てる資金として、ほとんどのマンションでは修繕維持積立金を毎月徴収して積み立てていますが、大規模修繕を行うには不十分の場合も多く、必要な額に増額しようとしても、月々の負担が大きくなる話ですから、合意形成を得る事が難しいことも少なくありません。

構造耐久年数よりも早く検討される建替え

合意形成を得られたとしても、大規模修繕では現状維持しかできません。同じ大きな費用をかけるのであれば建て替えたほうがいいのでは?といった検討がされる場合があります。
構造耐久年数としてはまだまだ活用できる築30年〜40年程度で建て替えられた事例は少なくありません。
建て替えの検討を始めると、解体する建物のメンテナンスに費用をかけるのはもったいないということで、維持管理の意識がどんどん薄れていきます。また建て替えを行うための合意形成には大規模修繕よりも多い居住者の賛成が必要となり、意見調整にはかなりの時間がかかります。
この場合、建て替え、または修繕に意見がまとまる、すなわち合意形成に至るまでの間、建物はそのまま放置されることになります。
そのまま放置されることは、居住者にとっても建物にとっても良い事ではありません。

老朽化とともに必要になる大規模修繕

このようにマンションは、良好な状態に維持管理するのも建て替えするのも合意形成次第という宿命を持っています。
分譲マンションに安心して長期にわたって住み続けるためには、合意形成という宿命を自分たちの力で乗り越えていかなければなりません。すべての人は当事者であり、人ごとではないのです。

スケルトン定借が切り開く集合住宅の新しい可能性

このように、分譲マンションが持っている合意形成という宿命を、利用権(使うことができる権利)という発想で、劇的に解消しようとするのがスケルトン定借です。

スケルトン定借とは

スケルトン定借とは、修繕や建て替えの話に煩わされることなく、60年間の長期にわたり安心で快適な住宅を使うことができる権利(利用権)を安価に取得できる仕組みです。
茨城県つくば市にある旧建設省建築研究所で開発されたため、つくば方式とも言われています。

スケルトン定借の仕組み

スケルトン定借は、60年の一般定期借地権と30〜35年の建物譲渡特約付借地権を組み合わせた仕組みです。本事業の居住者は、当初30〜35年間は定期借地権住宅として、後半の25〜30年間は定期借家権住宅として利用する権利を取得します。(※注)
当初30〜35年間は地代、後半25〜30年間は家賃がかかりますが、建物譲渡特約行使時の譲渡費用と家賃の相殺契約を締結することで、居住者の実質負担は原則60年間を通じて変わらないように設定されています。
60年間の利用に必要な修繕積立金を設定することになっており、修繕積立金に滞納などがある場合は30〜35年目の時点で、個別に精算されます。滞納した人は家賃がその分増額されるようになっています。
このように、修繕維持積立金の滞納者がいる場合でも、他の居住者が催促しなくても建物の維持管理レベルが下がることなく、安心して快適に住み続けることができます。
60年間を通じて内装は居住者の所有となるので、ライフスタイルの変化に応じて自由にリフォームなどすることもできます。

※注:30年目の建築譲渡特約を行使するかしないかの選択権は地主に与えられています。
行使しない場合、60年間の一般定期借地権となります。

土地所有者からみたスケルトン定借

人口減少時代を向かえ、住まいに対する劇的な需要変化が進行しており、従来型の土地活用のあり方に混乱が生じています。スケルトン定借は、このような時代における、低リスクで安定的な土地活用方法を提示しています。

スケルトン定借を土地所有者から見たメリットとしては、

@空室リスクがない。

A借金をする必要がないため、事業リスクがすくない。

B相続税対策や、固定資産税対策ができる。

C建物内に土地所有者経営部分(貸店舗、賃貸住宅等)を複合すれば、収益性を高められる。

D自宅を複合することができる。

E30〜35年後に建物を買い取って借地を終了させるか、定期借地権を続けるか選択できる。

などが挙げられます。
また、定期借地権に対して土地所有者側に残る、「本当に土地が返ってくるのか」という疑念に対し、賃貸マンションに移行するシステムを採用することにより大幅にリスクを低減しています。この点も、土地所有者にとって大きなメリットになることでしょう。
スケルトン定借はかなり複雑な仕組みですが、非常に合理的にシステム化されており、集合住宅の持つ宿命を劇的に解消する方法の一つとして大きな可能性を持っています。
スケルトン定借に関連して、優れた業績に対して数多くの表彰がされています。

住宅総合研究財団:第1回住総清水康雄賞受賞(2008年) その他多数

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