住宅新報 2010. 8.24

「SI定借」と木造連棟融合

幅3.6m、延長36mの侵入路を持つ典型的な旗ざお地。樹齢数十年の樹木が雑木林然と生い茂り、しかも高低差の大きい土地――そのままでは接道要件も満たさず、10年以上も放置されたままの土地が優良街区、優良資産として蘇る。

そんなプロジェクトが京都で誕生した。超長期耐用のスケルトン住宅と定期借地権、コーポラティブ手法を組み合わせた「スケルトン定借」に、長期優良住宅仕様の木造テラスハウス、建築基準法第86条の「一団地認定制度」など多彩な制度・手法を融合・活用、4棟に分棟化した13戸の低層住宅街区(うちスケルトン定借分譲7戸、賃貸6戸)を生み出す独創的で先進的な土地活用「京都宇多野コーポラティブハウス」がそれだ。

”仕掛け人”は、関西で初めてスケルトン定借を事業化した都市コーディネーターのキューブ(神戸市、社長・天宅毅氏)。対象地は世界遺産・仁和寺に隣接する京都まちなかの高級住宅地(右京区宇多野)にある約1390uの旗ざお地だ。

環境は十分だが、土地に高低差があるため集合住宅化してもRC造では基礎工事だけで建設コストが巨額になり、分譲でも賃貸用でも採算に乗らない。まして、接道要件不足で雑木林化。通常では「使い道のない土地」を同社は、”あの手この手”で見事に蘇生させることに成功。「京都方式」として8月8日、現地で竣工見学会を行った。

画期的「京都方式」 キューブが事業化

独特の土地形状と自生林を生かし自然に溶け込んだ持続可能な街区づくりを目指す一方、土地所有者メリットも最大限に引き出せるようにした計画で、スケルトン定借に木造の低層連棟住宅を投入、「新・京町家」ともいうべきスタイルによって京都が持つ歴史的景観への積極的なアプローチという実験も盛り込んだ。インフィルはもちろん、コーポラティブ参加者が思い思いの設計で飾っている。

国の長期優良住宅先導的モデル事業にも採択されたプロジェクトで、どんな土地も提案次第で蘇ることを示した好事例であるとともに、地所の持つ可能性の大きさをも改めて示す事業として今後さらに注目を集めそうだ。

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