住宅新報 2013年2月26日号 2面

「定借」「コーポラ」で活性化策-鳥取市、独自のスキーム構築-"

「定借」「コーポラ」で活性化策 ―鳥取市、独自のスキーム構築―

県庁所在地なのに、中心市街地は駐車場だらけになり、商業も周辺の大型ショッピングモールの進出もあってシャッター通りに……。空洞化と過疎化が急速すぎて疲弊に歯止めが掛からない。この現状をなんとか打破したい――。

山陰の特例市で、中核都市の1つである鳥取市の現状だ。地方都市共通の過疎化・高齢化問題が進む中、居住用の土地が出でこないため、中心部から周辺部の新興地域に人口が流出する「ドーナツ化」が市街地の疲弊に輪をかけている。全国でも、最も地方都市問題が顕在化している都市の1つとされている。

こうした状況を打開するため鳥取市は、定期借地権によるコーポラティブ方式を活用した「市街地再生・活性化モデル事業スキーム」を構築した。定借スキームや住民参加型の住まい・まちづくりに詳しい小林秀樹千葉大学教授が座長を務めた「鳥取市街なか居住推進調査研究会」の提言に基づき進められた事業で、定借の活用で地主が土地を手放すことなく収益を上げられるようにする一方、資産形成の観点から土地全体を一団地化して街並み形成を伴いながら住宅供給を実施するものだ。

昨年末に事業化

今回はモデル事業のため、市所有地約790uを活用。定借コーポラティブ住宅建設事業者を公募し、地元工務店の田中工業(聲高昌可社長)など3社で構成する「まちムラの会」を選定。市と同会が事業協定し、「鳥取西町コーポラティブハウス」として5戸のコーポラティブ住宅設計コンセプトに基づいて、入居者となる事業参加者を募集した。

住宅は県産材を利用した長期優良の「戸建て低層接地型高耐久住宅」で、太陽光発電やオール電化などでスマート化も図っている。分譲価格は2000万〜2300万円、1戸当たり100万円の保証金方式で、地代は月2万3000円に設定している。昨年12月に竣工した。

市では3月22日、その成果を報告するシンポジウムを開く。市街地内の土地所有者に駐車場以外に有効な土地活用策があることを周知し、人口を呼び戻すことで所有地の利用価値がアップすることを訴えたい考えだ。土地利用の大きな転換の動機付けと意識変化(=居住用地供給のための地主開拓)の促進を目的に行うシンポジウムで、全国のシャッター街再生への参考にもなるよう、都市のコンパクト化を進めるための「鳥取発モデル」としても発信する。

シンポジウムで基調講演を務めるキューブの天宅毅社長は、「このままドーナツ化が進んでいくと、将来行政がインフラ整備に耐え切れなくなるだけでなく、現在のドーナツ部分の高齢化による人口収縮が急激に起こり、核となる郊外型スーパーも撤収、鳥取市が街ごとなくなってしまう可能性すらある。しかし、中心市街地の土地所有者は危機感を持っていないのでは。所有する土地の資産価値を保全するためにも、街なか暮らしを進めることが、地主のメリットであることを訴えることが急務」と話している。

「街なか居住」で無料シンポジウム ―鳥取市、3月22日開催―

鳥取市は3月22日、「鳥取市街なか居住シンポジウム〜街なか居住のすすめ〜まちを元気にする土地活用をしませんか!?」と題するシンポジウムを開催する。

市街地再生・活性化モデル事業スキーム構築に関わった、都市コーディネーターの天宅毅氏(キューブ社長)による基調講演の後、独立行政法人建築研究所の藤本秀一住宅・都市研究グループ主任研究員、鳥取市関係者、「まちムラの会」代表の聲高田中工業社長らが講演する。その後、出席者によるパネルディスカッションを行う予定。

場所は市内・尚徳町101の5のとりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館)第2会議室で午後1時30分から。スキーム入場は無料。

 

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