建設工業新聞  2000.6.7

 

「スケルトン定借」関西第一号

 

「スケルトン定借」関西第1号

塚口コーポラティブハウス竣工 普及へ記念セミナーや見学会

自由設計と定期借地権を組み合わせたスケルトン定借マンションの関西第1号となる「塚口コーポラティブハウス」が、兵庫県尼崎市南塚口町に竣工した=写真。これを記念してスケルトン定借普及センター関西支部今月2、3の両日、見学会と公開セミナーを開催したところ、当初予定を大幅に上回る約250人が詰めかけ、関心の高さを示した。デベロッパーやコンサル・設計事務所関係者のほか、建築系学生も数多く参加。高齢化が進み、便利な都心での生活を望む人々の増加が予想されるだけに、今後注目を集めそうだ。

多様な財形・設計プランが可能
事業コーディネート=キューブ
施工=不動建設神戸支店
スケルトン定借は、間取り・内装が自由に注文でき100年もつ耐久性のあるマンションを、定期借地権により安く購入できる仕組み。建設省建築研究所が開発したもので、1996年に茨城県つくば市内で初めて建設されたことから「つくば方式」と呼ばれている。正式には「スケルトン型定期借地権住宅」という。
構造躯体を意味するスケルトンと、インフィルという間取り・内装を技術的に分離し、前者は100年以上の耐久性を、後者は生活様式の変化に応じた可変性を重視して設計されているのが特徴だ。
入居者は定期借地権契約で地主から土地を借り、耐久性の高いマンションを建設。毎月建設費のローンと地代を払う。30年後に建物の権利は地主に受け継がれ、以降賃貸マンションとなるが、地主に譲渡した建物の代金と家賃の一部を相殺する契約が適用されるので、その後30年は地代程度の家賃で住み続けることが可能。61年目からは普通の賃貸となる。地主側にとっても、元手がなくても経営ができるほか、建物の一部を駐車場や店舗など多様な経営プランが可能に。また収益の税金対策も見逃せない。双方のメリットは大きい。
このほど完成した「塚口コーポラティブハウス」は、阪急塚口駅から徒歩4分で、敷地面積約650平方b。地主の増田裕弘氏が98年3月に住宅金融公庫大阪支店の主催で開かれた土地活用シンポジウムに参加。スケルトン定借によるマンション建設を決め、8月には全体設計および収益計画を選ぶ公開コンペが行われた。1階に整形外科医院を設け、2階以上をマンションとする条件で建設会社など3グループが事業計画を提案した。
この結果、キューブ(神戸市中央区、天宅毅代表取締役)が当選。RC造6階建て延べ1370平方bで、2〜6階のマンション部分に11戸が入居する計画が地主側の税制上の問題なども考慮して選ばれた。住宅は専有面積69.5〜99.9平方b。販売価格は2608万 〜3897万円(地代戸当たり月約2万円)。入居者の募集を進める一方、同社が企画・設計など事業コーディネートを行ってきた。
また、塚口コーポラティブでは、施工会社の選定にあたっても、前例のない方法が採用された。建築費の上限を提示し、建物の高耐久性と将来的な設備の更新性についてのノウハウを競う選定コンペが実施され、入居予定者らによる投票で不動建設のプランに決まった。
100年以上の耐久性を持たせるため、柱の鉄筋密度は 通常の倍。フープ、スターラップに圧接閉鎖型鉄筋を用いるなどコンクリートを保護し、十分な変形能力が得られる工夫をしている。また、将来の設備配管更新 に備え、横引き排水管を極力短くし、あえて共用竪排水管を設けたほか、予備スペースを確保。居住したままの更新が可能となった。こうした技術力が高く評価 され、99年8月から工事が進められてきた。
今回の竣工記念セミナーは、3日午後1時30分から塚口サンサンタウン2番館集会室で開かれ、同ハウスの設計主旨や構造計画などを、天宅毅キューブ代表取締役らが説明。第2号の芦屋川コーポラティブハウス(芦屋川三条町)など関西で現在計画中のプロジェクトも紹介された。一方、見学会は2、3の両日、計4回に分けて行われ、それぞれ個性あふれる各住戸内部を熱心に見学していた。

―入居者参加で祝いの式典―
3日午後4時からは、塚口コーポラティブハウスの1階で入居者全員が参加して竣工式が行われた。施工を担当した不動建設からは濱地博一代表取締役専務=写真、鈴木輝幸神戸支店長ら工事関係者が出席した。神事の後の直会には小林秀樹建設省建築研究所住宅計画研究室長、竹井隆人住宅金融公庫大阪支店まちづくり融資課調査役もお祝いに駆けつけ、和やかに歓談した。

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