神戸新聞  1999.10.23

 

公募型の協同住宅着工

 

灘・備後町 公募型の協同住宅着工

地権者ら12人 わが家再建へスクラム

単独では自宅の再建が難しい被災者たちが、新しい参加者を募って協同住宅を建てる「コーポラティブハウス」(協同住宅)の地鎮祭が十九日、神戸市灘区備後町三の建設予定地であった。従来の地権者が四人、公募で参加した人が八人。参加者公募型のこうした着工はほとんど例がないという。震災から三年余り。手を取り合って迎えたわが家の着工を、地権者らは感慨深げな表情で見守った。


現地はJR六甲道駅の南東。約二百六十平方bに五戸の店舗や住宅が並んでいたが、震災ですべて全壊した。
再建に当たっては共同化の方向で検討を始めたが、一戸が敷地を売却。残る四戸が等価交換方式による共同再建の意向を示した。各戸の負担を軽くするため、新たな参加者をチラシで公募し、計十二戸で建設組合を結成した。
コーポラティブハウスは最初に入居者を募り、住戸プランや内装などに入居者の意向が反映できるのが特色。通常なら着工まで数年かかるところを、今回はコー ディネーター側で事業の大枠を設定、短期間での着工にこぎつけた。新たに建つのは、地上八階、地下一階建ての店舗兼住宅。完成予定は一九九九年一月。住宅市街地総合整備事業制度で建設費の一部に公費助成を受ける。
コーディネーターの一級建築士・天宅玲子さんによると、民間ディベロッパーの手を借りずに事業を進めたことで従前資産を高く評価でき、持ち出しがほぼゼロに近い人もいるという。参加者への販売価格も近隣のマンションに比べ安いという。
店舗と自宅が全壊し、仮設住宅などを転々とした地権者の一人、向山敏晴さん(八五)は「う余曲折はあったが、本当にうれしい」と笑顔を見せ、倒壊した家屋の下敷きになって重傷を負った奥田貫二郎さん(七九)も「ずっと住んでいた場所に戻れると思うと」と感慨深げだった。

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