神戸新聞  1998.8.2

 

震災3年半 待望の再建

 

東灘の半壊マンション 震災3年半

待望の再建対立越え仲良く入居 交渉100回 住民合意 喜びひとしお/p>

震災で半壊し全面建て替えが進められていた、神戸市東灘区渦森台二の分譲マンション「ディセット渦が森」(旧・渦森団地17号館)が完成し、一日、竣工式があった。震災から三年半余り。建て替えは補修かをめぐる意見の対立を乗り越え、ようやくこぎつけた再建の日を、住民らは満面の笑みで迎えた。建て替えに反対していた住民全員が入居する例は珍しいという。 (長沼隆之記者)


もとの建物は、神戸市住宅供給公社が一九六八年に開発した渦森団地二十棟のうちの一棟。五階建てで計五十戸が居住していた。地震では西側の基礎の一部が破損、建物が傾き、半壊判定を受けた。

その後、建て替えか補修かをめぐり住民の意見が対立。建て替え派が多数を占め、ほぼ全員が住み続けながら協議を続けたが、話し合いは難航。コンサルタントが調整に入り、個別ヒアリングなどを通じて両者の相互理解を深めた。住民側も百回を超す話し合いを粘り強く続け、九六年十二月に建て替えを決議。再建組合には建て替え反対派だった住民も全員参加、九七年七月に着工した。

完成したマンションは敷地面積約二千九百平方b。地上六階、地下一階建てで住居は計七十一戸。権利者の転出分(七戸)を含む二十八戸を一般分譲、すでに完成した。総事業費は約十五億円。神戸市の優良建築物等整備事業制度の助成を受けた。

再建組合も藤田佳之理事長は「時間をかけて話し合った結果、合意にたどり着くことができた。長かったが、本当にうれしい」と感慨深げ。

コンサルタントの天宅毅さんは「コミュニティーが崩壊の危機にあったため、反対者の説得ではなく、情報共有を目指した。住民は再建後も共に暮らす。互いの思いを分かった上で戻れてよかった」と話した。

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