スケルトン方式脚光
新しい集合住宅のあり方
少子・高齢社会、防災、都心居住の促進など、都市における新たな「集住」のあり方が問われている。解決策の一つとして、「スケルトン(建物の骨組み)住 宅」が注目を集めている。住まい手の希望に合わせて間取りや内装を自由に変えながら、骨組みは百年以上長持ちするという地球環境にも配慮した長寿命の集合住宅。大震災で問われたコミュニティーの再構築の観点からも効果が期待される。定期借地権との組み合わせや賃貸方式などで普及しつつある、新たな住宅供給システムの現状を見た。(社会部 長沼 隆之)
尼崎、神戸など 共同居住や定期借地権 多様な形で事業 「所有」転じて「利用」へ
大阪のNPO「街づくり支援協会」(小森星児会長)は、神戸市垂水区にスケルトン賃貸方式によるコレクティブ(共同居住)住宅「フレックスライフ舞子」を六月にも着工する。民間賃貸のコレクティブ住宅にスケルトン方式を採用するのは全国でも初めてという。
地主が建物の骨組み(スケルトン)を建設、所有。同協会がスケルトンを一括して賃貸。入居者は同協会と賃貸契約を結び、内装(インフィル)を工事・所有する。入居後は月額家賃、共役費などを負担する。
モデルプランでは、五階建て、四十戸程度。一階には交流スペースや大浴場を設け、地域との交流も計画。中廊下方式で、出会いの場を多く取る。間取りなどは入居者の自由設計となる。現在、入居者を募集中だが、中高年層を中心に関心は高いという。同協会が事務局の「フレックス・ライフ倶楽部」では、入居希望者らが集まり、住まい方などを話し合っている。
参加した尼崎市の女性(四七)は「将来、親の面倒を見なければならないが、自分の時間を大切にしながら、介護ができる家がほしい」と関心を寄せた。
事務局長の中西光子さんは「主役は人。コミュニティー重視を建物に反映できる。入居者は分譲に等しい満足感を得られるし、地主にしても建設しても入居しない悪循環の解消につながる」と意義を語った。
十一日には神戸・元町の神戸まちづくり会館でフォーラムを開く。
尼崎市内では、定期借地権を活用したスケルトン住宅(スケルトン定借)の関西第一号マンションの建設が進んでいる。
完成予定は六月。六階建て、十一戸が入る。高齢者世帯や三世代家族、シングルら顔ぶれは多彩だ。入居予定者が建設組合を結成、間取りを自由に設計できるコーポラティブ(協同)方式を採用した。 定借利用のため土地購入費用がいらず、販売業者も介在しないため、分譲に比べ約四割安い。
スケルトン定借は、一九九六年、建設省建築研究所が考案。茨城県つくば市で第一号マンションが完成した。関西では、芦屋市内でも事業が進行中だ。
尼崎の場合、入居者は当初三十年間、地代だけを地主に支払う。借地権の切れた後は地主がスケルトンを買い取り、賃貸契約に変わる。通算六十年間持ち家感覚で住み続けられる。大規模補修が必要な時期には所有権が地主に移っており、区分所有のように合意はいらず、補修も容易に なる。地主に収益源を保障することで、更地の有効利用にもつながる。
ただスケルトンが百年以上耐える構造であっても、本当に持たせるには良好な管理が欠かせない。
企画・設計を担当した「キューブ」(神戸市)の天宅毅さんは「管理の良しあしが買い取り価格に反映するため、入居者の意識が高まり、優良な建物を残すことにつながる」と指摘する。
分譲マンションの建替えは、すでに社会問題化している。日常の維持管理に重点を置くスケルトン住宅の普及は、紛争の軽減とともに、廃棄物削減、良好な社会資産づくりなどからも効果が期待される。
融資面など供給を促す支援制度の整備、コスト削減への技術開発、維持管理のルールづくりなど課題は残されている。何よりも「所有」から「利用」へ、人々の価値観の転換が、新たな「集中」のシステム普及へのカギとなりそうだ。