毎日新聞    2000.4.26

アーキテクトオフィス関西 キューブ

アーキテクトオフィス関西 キューブ

専門家の役割は緩衝装置

もともとは大手デベロッパーに勤めていたが、大量供給型のマンションを作り続けるデベロッパーに「疑問を感じていた」という。事務所設立に至るのには震災がきっかけだった。設立は震災から約1年半後の平成8年6月20日。事務所名のキューブ(立方体)は、3次元のすべてを象徴し、建築の本質に迫りたいという思いが込められている。「形態論だけにとどまらず、もっと根底のところで建築を考えていきたい」と話す。

これまで携わってきたものは、震災で被害にあったマンションの再建やコーポラティブ方式による共同建替など。スケルトン定期借地権と組み合わせたコーポラティブハウスも事業化に乗せ、この5月には完成の運びとなった。共同建替えなどにあたってはコーディネーターとして計画段階から携わるが、その際には徹底して客観的な専門家という立場をとる、 という。「当事者間の話し合いを最優先させるという考え方もありますが、私はそうは思いません」ときっぱり。「当事者間の話し合いは結局けんかにしかなりません。当事者が直接相手にではなく専門家に話すことによって、専門家が緩衝装置となり、当事者間に余計なあつれきも生まれなくなります」。そして全員の最大利益のためにどうすれば良いのか考えるのが「専門家の役目」と話す。

個々の共同建替などの事例は、もっと広がってまちづくりにもつながってくる。震災を踏まえて、阪神間のまちがこれからどうなっていくのか。「最後まで見ていきたい。いや関わっていきたいですね」
(左海記者)

・ 事務所―神戸市中央区磯辺通3‐2‐17ワールド三宮ビル9階078(222)9515
・ 代表取締役―天宅毅(35歳、神戸大学大学院修了。趣味は仕事)
・ 主な作品―ディセット渦が森(98年、神戸市東灘区)、スクウェア六甲(99年、神戸市灘区)、塚口コーポラティブハウス(仮称・00年予定、尼崎市)

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