住宅を割安に販売ひと工夫
入居者組合、間取り設計
「地上権付き」分譲相次ぐ
近畿圏で新しい販売形式の住宅が登場している。入居者が組合を作って自ら間取りを設計する新方式のマンションの建築計画が進んでいるほか、物権を設定して他人の土地を所有する「地上権付き住宅」も相次ぎ売り出された。いずれも割安な価格に抑えたのが特徴。住宅不況が長引くなかで、消費者の需要を喚起できるか注目されている。
新方式のマンションの特徴は、入居者が組合をつくって地主から土地を借り、自由設計の住宅を低コストで建てられる点にある。
一方、地主にとっては建物の建設資金がなくても高利回りの地代を得られる利点がある。契約期間は六十年で、前半三十年は「建物譲渡特約付き借地権マンション」とし、
後半三十年は賃貸マンションに切り替える。定期借地権付きマンションと同様に土地代が不要なため、入居者は自由設計の費用を軽減できる。
三十年後に地主が入居者から建物の所有権を買い取るが、この買い取り代金と三十一年目から六十年目までの家賃を相殺、資金はやり取りしない。このため、
入居者は三十一年目から一般の賃貸物件より安い家賃で入居できる。この方式は、建設省建築研究所(茨城県つくば市)が開発した。九六年につくば市で第一号が完成した。
近畿圏では、住宅金融公庫大阪支店(大阪市)が仲介した尼崎市の物件が初めてになる見通し。二〇〇〇年六月完成予定で、住戸数は十一戸、価格は二千八百万円台から(専有面積八十平方b前後)。
このほか神戸市や芦屋市、姫路市、伊丹市の四ヶ所で計画中だ。
一方、地上権付き住宅は今年五月、東急不動産が近畿圏で初めて発売した。土地の値段を四―五割低く見積もって地上権とし、
土地付き住宅よりも三割安い価格に設定。これまで神戸市と京都府木津町の二団地で計四十三戸を販売した。今夏には能勢電鉄が兵庫県猪名川町で発売するなど市場は広がりを見せている。
この「地上権付き」は二年前から首都圏で販売されてきた。定期借地権付き住宅は通常五十年の期間満了後は土地を更地にして地主に返還するが、
「地上権付き」は契約の更新や所有権への移行が可能。割安価格で実質的に土地付き住宅を購入できるため、消費者の関心は高いという。