キューブ トップページ
日経アーキテクチュア 日経アーキテクチュア
2008年 5-12 No.874
購入志望者向けプレゼン
クレーム減につながった動画の"説得力"
マンションを購入する普通の人に、どのようにすれば図面やパースだけではわからない空間の魅力を感じてもらえるのか---。

こんな悩みに対する解を、キューブ(神戸市)代表の天宅毅氏は3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)に求めた。

3DCG動画を作成してパソコンの画像やウェブサイト上で見てもらうだ。現在は、ほぼ全案件で3DCGのプレゼンテーションを作成している。

同社は、コーポラティブハウスやマンションなどの集合住宅を得意とする設計事務所だ。発注者のデベロッパーはもちろんだが、購入者である普通の人たちへのプレゼンテーション力も求められる。
しかし、白い建具のバランスや、壁を照らす間接照明の効果をいくら言葉で説明しても、建築に詳しくない普通の人には伝わらないことが多い。特にコーポラティブでは、発注者の意向がどれだけ実現されているのか、図面だけでは説明が難しい。


若手所員の教育にもつながる。

一方で、「吹き抜けにしたエントランスロビーの広がりや、バルコニーからの海の眺望といった”売り”をきちんと伝えられなければ、激化する都市部でのマンション販売競争に生き残ることができない」と天宅氏は言う。
そこで、03年から3DCGによるプレゼンテーションを採用した。CADで作成した平面図を、3DCG作成ソフトのPowerSketchに取り込み、壁や窓の位置などを数値入力。壁のテクスチュアなども張り込んで、ウォークスルーの動画を出力する。これを動画編集ソフトのAdobe Premiereでつなぐ。「動画でのプレゼンテーションを始めてから、『イメージと違う』というクレームがなくなった。コーポラティブでは、3DCGのプレゼンをつくってほしいという建て主も出てきた」(天宅氏)
思わぬ副産物もあった。他社設計のプレゼンテーションを考えることが、若い所員の教育につながった。「発注者にプレゼンする際にも、見せ方のバリエーションが増えた」。例えば、ロビーに設けた滝の流れや扉の開閉を示すアニメーション効果のノウハウなどが、事務所内に蓄積されている。
もちろん、3DCGが完璧に表現できるわけではない。しかい、「設計者と発注者、購入希望者のコミュニケーションギャップを埋める効果は確実にある。図面とパースで説明していたときに比べて、相手の納得度は格段に高まった」と天宅氏。
現在は、作成したプレゼン用動画をYouTubeにもアップロードして、反響を持っている。


YouTubeにアップしたプロモーションの効果は?

キューブは08年4月、集合住宅のプレゼンテーション用動画を、YouTubeに試験的にアップした。
YouTubeは、世界中で広く地要されている、動画を公開できるウェブサイトだ。個人が撮影したビデオなどを公開できる。アップしたのは、「フォレスタージュ仁川高台」(兵庫県宝塚市)など2案件の3DCG動画だ。「アップロードは圧縮率を調整する必要もなく、あっけないほど簡単だった」と天宅氏。検索されやすくするために、プロジェクト名や「CG」といったキーワードを付けた。宣伝用ウェブサイトへのリンクも張った。具体的な反響はまだないが、閲覧者からの問い合わせなどを天宅氏は期待している。
 
■close
All rights reserved, Copyright (C) 2008 CUBE Co.,Ltd.