コーポラティブ方式による共同再建事業

スクウェア六甲

○事業展開
阪神・淡路大震災で六甲道、八幡商店街沿いの5軒長屋の2階建て店舗付き住宅が全壊した。再建にあたり、様々な方法を検討した結果、12軒の共同住宅へ、等価交換方式にて再建をすることになった。
地権者5軒のうち1軒が事業に参加せず土地を売却、残りの地権者4軒と8軒の保留床で共同化事業を開始した。事業代行者(デベロッパー)が参画し、工事費の立替や、保留床部分の販売などを行う場合は、デベロッパー利益や販売経費を見込む必要があり、また、販売価格を下げるため、建築費の圧縮を図らざるを得ない場合もある。
再建する建物を良質なストックにする為には、こういった状況を逃れて、堅牢な構造や更新性の高い設備、住まい方の変化に対応できる順応性の高い間仕切りなどを実現していくことが重要であると考えた。
具体的には、一般の分譲マンションのように完成した住宅を購入するのではなく、住宅の購入を考えている人が集まり共同で土地を取得し、各自の要望を取りいれながら設計し、自らが工事の発注を行なって住宅を取得するというコーポラティブ方式を採用することにした。しかし、従来型の方式では時間がかかりすぎる為再建事業にはなじまない。そこで、企画者サイド(事業コーディネーター)で事前に事業フレームと建物の概略を定めた上で入居者(参加者)を募集した。事業の根幹に関わる部分を予め決めておくことでスケジュールやコストなどを事業コーディネーターがコントロールできるようにする為である。
その結果、保留床部分は周辺分譲マンションの販売価格に比べ割安感のある価格にて設定することが出来た。また、新聞ちらしで行なった入居者(参加者)募集では即日で全参加者が確定した。その後、大きなトラブルもなく、ほぼ当初の予定通り募集より約8ヶ月で着工に至ることが出来た。


○設計主旨
この建物は、純ラーメン構造(柱と梁だけで力を負担する構造。そのため自由に壁を配置することができる)で計画した。また完全に、スケルトン(躯体部分)とインフィル(内装部分)の分離を図った。
スケルトン部分は良質なストックとなるべく、十分に堅牢な構造設計を行ない、長期的な修繕計画を配慮した材料を選定した。インフィル部分は、スケルトン部分と完全に切り離し、将来の住まい方の変化に応じて容易にプランニングを変更できるように、また、設備配管など老朽化に伴い更新する必要のある部分は、容易に更新できるように設計した。
計画地は、将来的には周囲に建物が密集して建つことが予想される。階段とエレベーターを中央にはさみ、ワンフロアーに2住戸という配置としたことで、各住戸とも外部に開放された面を3面持ち、できる限りの通風と採光を確保、将来的にも快適な住環境が担保されるよう工夫している。
また、周囲のまちなみを考慮し、上層部をセットバックさせることでボリューム感を低減させ、住宅環境としてふさわしい落ち着いた外観とした。道路に沿って空地を設け、できる限り植栽を配置し、まちなみにゆとりを持たせると共に、うるおいのある外部空間が創出される事を期待している。