スケルトン定借(つくば方式)が何故画期的な住宅供給手法なのか




スケルトン定借は永住型のマンションを実現するために、建築的な側面のみならず権利的な側面まで統括してシステム化した画期的な住宅供給手法です。これを理解する為には、将来において分譲マンションが直面する問題を知っておく必要があります。
一般に供給されている分譲マンションの購入者は当然の事として建物は永続的な物と考えていると思います。しかし当初にいかにメンテナンスに考慮した設計を行なおうと、また住民が十分なメンテナンスを行なっていようと、約30年以上経てばエレベーターや機械式駐車場等機械設備類の更新や配管等の更新といった大規模修繕が必ず必要となります。この大規模修繕を実施する為には戸当たり数百万円の費用と、これに対する区分所有者の合意形成が必要となります。ところが阪神・淡路大震災で被災したマンションの再建でも明らかになったように、共同住宅に生活する入居者の状況は様々で、同一の方向に入居者の合意を得る事は現実的には非常に困難です。また、築20年を超えると(住宅金融公庫等金融機関の融資基準から)中古マンションとしての流通性が低くなる為賃貸比率が高くなり、この事がさらに合意形成を困難にしています。


マンションの建物修繕費の推移(広さ80uの場合の一例)
(社)東京都不動産関連業協会発行「調査研究報告:スケルトン定借事業」

た、現在供給されているマンションでは、将来必要な排水管等設備配管の更新等について充分に考慮していないものも多いようです。そのような場合は、大規模修繕が技術的に困難となり、建替えの検討もせざるを得ません。建替えは全員合意が前提となりますので、合意形成はさらに極めて困難です。今でも多くの老朽化集合住宅で建替え・補修をめぐる紛争が起こっている状況です。結局、大規模修繕をする事も建替えをする事も非常に困難となり、この場合そのまま放置されスラム化が進むような状況に陥ります。入居者はまさかローンも払い終わっていない内にそのような状況になるとは夢にも考えていないと思いますがこれが実際に起こりつつある現実です。このように、将来において必ず迎える状況に対して、現実的に得る事が困難な合意形成を前提とした建替えや大規模修繕しか対処方法を持たない現状の分譲システムはシステム上非常に大きな問題を抱えていると言えます。また、一般に供給されている一般定期借地権マンションでは最終的に は解体し更地にして返還するため借地期間満了時までの継続した十分な修繕維持は望めず、将来的なスラム化を避けることはさらに困難であると言えます。

スケルトン定借はこれらの問題を解決する非常に有効な方法論です。スケルトン定借では約30年後(塚口コーポラティブハウスでは35年後)の建物買取り価格に修繕状況を反映させる契約を地主と入居者が個別に締結します。その結果、もし修繕状況が十分でなかった場合には買取り価格が安くなりますから、買い取った後地主が修繕を行なえばよい事になります。また十分な修繕状況であれば地主の買取り価格は高くなりますが、地主は当面は修繕をする必要が無い事になります。この様に入居者が十分に修繕を行なう事がインセンティブとして、修繕を怠る事がペナルティーとして機能させる事で、合意形成を必要とせずに建物の修繕維持が確実に為され、60年間良好な状態のマンションに地代並みの低いコストで住みつづける事が可能となるわけです。このようにスケルトン定借は永住型のマンションを実現するために非常に有効なシステムだといえます。

一方、スケルトン定借は、地主側から見ても一般定期借地権で危惧されている土地の返還が確実になされるメリットがあります。一般定期借地権では借地期間終了時における更地返還が基本とされていますが、その前提として退出、解体がなされなければなりません。これが確実になされなければ土地の返還は困難になります。スケルトン定借では途中で借地権から借家権への返還を行ないますので入居者の権利を最終返還前に低減しています。その上、60年後以後も賃貸マンションになるため退出させる事が不要です。このようにスケルトン定借は、地主にとって確実に土地を戻す方法でもあるのです。

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