構造設計にあたり、留意した事
1.本建物の敷地は丁度谷筋の傾斜面上に位置している為、支持層(花崗岩)が大きく勾配を持っており、杭基礎として設計されていた旧建物はPC杭(直打ち工法か?)を用いて長い杭と短い杭が混在した形となっていた。当時の杭設計方法としては、単に鉛直支持力のみが対象となっていた為、杭の長短による地震力の入力のアンバランスは考慮されていない。その為に、地震力が作用したとき、剛性の小さい長い杭側が大きい水平変位を受け、杭が破壊され、建物ガ傾き、本建物の再建の原因となったのである。
以上の様な事を教訓として、再建建物では杭に剛性の大きい、かつ靭性を有する場所打ちコンクリート杭を採用すると共に、長杭、短杭が混在せざるを得ない状況である事を考慮して、杭レベルでの捩れ補正計算を行なって、杭に作用する地震時の水平力を決定している。
また、短杭よりも更に短い杭については、栗コン併用の直接基礎となるので、支持地盤のPS検層を行なってせん断波伝達速度を求め、直接基礎としての水平剛性を算出し、上記の杭レベルでの捩れ補正計算に盛り込んでいる。
2.主要な柱について1階〜3階まではフープとして高強度せん断補強筋(商品名:ウルボン)を用い、かつフープ形状を目型としてコンファイン効果を与え、せん断耐力、変形能力を高めている。
同様に主要な大梁についてもスターラップとして、高強度せん断補強筋を用いてコンファイン効果、せん断耐力、変形能力を高めている。
3.腰壁、垂れ壁に構造スリット(完全スリットタイプ)を設けて可撓部分長を大きくし、短柱となることを避けて、柱に対する地震時せん断力の集中を回避している。
また、同時にこの事が建物全体としての平面的、立体的剛性バランスをよくし、耐震的安全性を高めている。