■マネージャーはゼネラリストを目指せ

 しかし、分かり易い産業目標が消滅してしまった現在の企業社会においては、今後、マネージャーは自らの見識において組織の進むべき道をプロデュースしていかなければならない。会社や業界の意味不明の常識から勇気を持って決別すべき時期を迎えているのだ。

 そのために必要なのは、今まで閉じこもっていた会社の狭い枠組みから自らの精神を解放し、自らの会社を客観的に観察することによって、社会全体との新たな関係性を構築できるゼネラリストとしての資質を培うことである。経済人は技術を評価する心が大事であり、技術者には科学する心が求められる。

元来、農耕民族である日本人は額に汗して働くことを美徳としており、その取り組み姿勢にはスペシャリスト性が望まれている。まさに、日本人は一億総スペシャリストを目指している。

マーケティング・コンサルタントとして私は生活者や地域産業、企業、地方自治体など、どんな組織や業界団体とも平均して付き合うが、初対面の時に必ずといってよいほど尋ねられることの一つに私の専門分野がある。しかし特定の専門分野などは私には無い。組織や地域を活性に導くという"必然の探査"の基本は人間に対する観察力であり、特定の技術はその段階においてはむしろ邪魔になる。いくらそのように説明しても相手は納得しない。専門分野を確認しないと安心できないのか、引き続き過去の業務内容の中から専門領域を推察しようとする。個人のアイデンティティは専門性の中にしか感じ取ることができないらしい。彼らにとってゼネラリストとは山師と殆ど同義語なのだろう。

同質の人間で群れる会社の中から意識を社会全体に広げて、幅広く人間と世の中を観察し、自分の中に自らが携わる業務の上位概念となる社会哲学を築く。そして、社会との関係において会社を客観的に判断しながら、自らの組織を自らが信じる"在るべき方向"に導く。専門特化型のスペシャリストから浅学多才なゼネラリストへ。この不透明な時代を生きる企業組織のマネージャーには、社会と会社と個人を客観的に観察して新たな組み合わせ論を構築できる、ゼネラリストとしての視点が求められているのである。 



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