■生まれつつあるもう一つの女性の適性領域
マスマーケットが限界に到達したため、企業社会はこれ以上三角形ピラミッドの拡大を続けることができず、それを構成してきた男性論理は自信を喪失して、その主たる役割を女性に譲ろうとしている。従来の資本と組織の論理で構成された無機質で硬直化したタテ型社会は、人間の生活を中心に横に連携した柔らかなネットワーク社会に取って代わられようとしている。そして、そのような社会への転換と運営の主たる役割が企業人たる女性に求められようとしているのだ。
しかし、男性中心社会から男性と女性の共存社会へというドラスティックな社会の変質の過渡期において、社会の歪みがもたらす新たな弊害が女性に集中しているのもまた事実である。産業社会の収縮現象の中で、就職活動は超氷河期にあるといわれている。そして、それは女子学生に特に大きな影響を与えている。皮肉なことに、女性に適性がより強い生活上位社会の誕生に先立つ産みの苦しみが、男性論理社会の最後のあがきとして女性を直撃しているのである。
誤解を恐れずに言えば、女性の既存産業界への就職の是非ということに関して私はある部分で否定的な見解を持っている。男性論理社会が弱体化傾向にあるにせよ、だからといって素直にその地位の移譲は起こらない。逆に刹那的に硬直度を高めている側面も多い。硬直化して死に体になろうとしているそのような会社組織の中で、女性が活き活きと活躍できる場は果たして保証されるのだろうか。そのようにフレキシブルな体質が企業にあったなら、そもそも組織は衰退化に向かわなかったはずだ。
社会全体が女性の属性に近づいている以上、革命は内部からより外部からの方が起こしやすい。就職は実社会のルールを知るための単なる一つのステップと理解し、数年後には自らの足で実社会に立つための準備期間とするのである。弱体化傾向の中で硬直化を強めている企業組織の中に入って女性の地位の向上を期待するより、自らのネットワークによって外部から男性論理社会に仕掛ける方が効果的な結果が得られる状況が生まれつつある。
社会の基本をなす論理構造が抜本的に改革されるには、まだまだ時間を要する。その過渡期の中で、男性論理の企業社会の中で新しい夜明けを待つのか。それとも軋轢の少ない外部での活動から企業社会に攻め込むのか。理論よりも感性や実感に忠実な女性は、自分に求められていることを明確に自覚することができる。したがって、第W章.第三節の二「生活周辺産業の起業の誘導」で述べている、既存地域産業では到達し難い生活周辺産業の起業などに、より適性のある新たな活動領域を求めることができるのではないだろうか。
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