第2節.中小製造業活性の考え方


1.中小製造業は地方の時代の中核産業


■製造業は地方の時代の基幹産業である地域産業の中核

「職人。じつにひびきがいい。そういう語感は、じつは日本文化そのものに根ざしているように思われるのである。日本は、世界でもめずらしいほど職人を尊ぶ文化を保ちつづけてきたが、そういうあたり、近隣の歴史的中国や歴史的韓国が職人を必要以上にいやしめてきたことにくらべて、"重職主義"の文化だったとさえいいたくなる。」(司馬遼太郎『この国のかたち』より)

 産業社会の基軸はモノづくり機能に求めることができる。しかし、バブル経済期に入ると消費性向が飛躍的に増大したことによって、商業という機能が大きくクローズアップされるようになった。そして現在クローズアップされているのが金融経済である。

 金融経済のマネーゲームが金融社会の中だけで完結していれば問題はないが、それは間違いなくモノづくりの実体経済にも影響を及ぼす。序章で述べた「哲学・科学・技術・経済」という社会構造の末端部分にしか位置できるはずのない経済の、完全な独り歩き現象である。モノづくりという産業社会の基本機能を中心に、人間社会の実体的な向上を図るのが、国レベルにせよ、地域レベルにせよ健全な社会の形成に必要な考え方であるはずだ。

 そして、地域レベルにおいて、その産業社会の基本機能を担うべき立場にあるのが中小の製造業である。地域産業は来たるべき地方の時代の基幹産業であり、そして、中小製造業はその中の中核産業と位置づけることができる。実体経済の基本をなすモノづくりの機能を地域の中で確保するということは、地域外からの他動的な要因に影響を受けにくい環境を作ることであり、地域社会の自立性強化に大きく貢献することになる。

 ものづくりの隆盛は実体経済振興の要である。したがって、地方の時代における基幹産業である地域産業の中核として、地域の中小製造業は市場経済化するマス経済社会に地域が翻弄されることを防御する役目を担うべきである。そのためには、地域に存在する様々な地域産業のエネルギーの結節点となるリーディング・カンパニーとして、地域生活者に望まれるモノを地域に戻すというモノづくり活動のスタンスの確立に努めなければならない。


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