■ネットワーク型事業システム
地域に軋轢を生む、単独の巨大資本による自己完結的な従来の開発事業の進め方では、一定範囲の開発が完成することによってその地域のエネルギーは全てその開発区域に吸い取られることになり、そのためその周辺地域では逆に地盤沈下が進行するといったケースも珍しくはなかった。単純な資本の論理が通用しなくなったポスト開発の時代における地域開発には、ヒューマンネットワークを基盤として、地域や組織の様々な機能やストックを活用しながら事業を展開出来る、柔軟な推進体制が用意されなければならない。
一般的に言って、企業は自社の事業活動を出来る限り内政化させて、外部に対して閉じた固い展開を図りたがる傾向がある。しかし、下請企業群からの商品のアッセンブルによって最終消費財の生産活動を行っている大手メーカーに代表されるように、企業活動のあらゆる部分を自社の中だけで完結させているケースは実は珍しい。
地域には製造機能、販売機能、フレキシブルな労働供給機能、生活情報などの様々な事業支援機能が集積している。また、更に視点を広げれば、地方自治体がコーディネートすることによって、大学や、文化、芸術の振興を図る様々な機関、団体にもアクセス出来る可能性がある。混迷の度合いを深める消費社会の中を高い確度をもって事業活動を展開するためには、様々な能力を有する他の主体との有機的なネットワークの元に新たなアッセンブル体制を築きあげなければならない。連携するすべての主体にメリットがあり、且つ自社のリスク低減策ともなるしたたかで柔軟な事業の推進を、地域に開かれたオープンネットワーク型事業推進体制を組むことによって誘導するのである。
また、進出する企業組織の内部に目を向けてみると、大手ならば当該地域に進出する事業以外にも多くの機能が存在している。縦割り構造の弊害も予測されるが、当該事業開発担当者は外部との連携だけでなく、自社内他機能との連携も視野に入れる必要がある。
こうした、地域社会や自社内に存在する様々なストックを広範なネットワーク体制の確立のもとに収益事業という枠組みの中に組み込んでいこうとするためには、企業活動の根幹はパブリックサービスにあるという強い自覚が担当者になければならない。その精神の規範力が高い情報発信力をもって、連携を図る他の主体の担当者との同志的結合を促すのである。
当該地域にとっての事業開発の正義とは何か。地域と企業組織を巡るあらゆるストックと既存の機能を理解して、地域とネットワークに参画する全主体にメリットがあり、一方で事業の中心的推進主体である企業のリスク軽減策にも繋がる、輻輳した人とモノと情報のネットワークチャネルの構築を図るのである。そうした取り組み姿勢の元に、地域や地方自治体、異業種との同士的結合は大きく促進されるようになり、ネットワーク型地域共生事業は具体の姿を結ぶようになる。
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