■仕事とは何か
社会と会社と個人の正しい関係とは、個人が社会のありようを正しく理解し、会社というある種の社会的機能を活用しながら社会の望むものを提供していくところに存する。そうした関係式のもとに財と情報とサービスが巡る限り、個人の能力は伸張し、会社は収益が増大し、社会は正しい方向に向かって成熟度を高めていく。そして、その望まれるものを提供するという行為こそが"仕事"なのである。このように、仕事とは社会と自分とをつなぐ一つの方法論であるということができる。
したがって、個人の哲学に基づくクリエイティビティが仕事の上位概念として意識の中に形成されていなければならない。社会と会社と仕事とをつなぐ公式を自らの中に築くのである。そして、具体的な業務とは開発した公式の証明作業であり、仕事をそのように理解して取り組むかぎり、それがたとえ失敗に終わろうとも、一つ一つの取り組み成果は確実にノウハウとなって個人の中にストックされていく。仕事とは社会という枠の中で会社が決めたルールに則って個人で展開案を組み立てる、ゲームなのである。
社会や会社と正しい関係を取り結びながら業務に携わっていけるかどうかは、全て個人の精神の自律性の問題になる。自分自身と真摯に付き合える人間だけが他人とも正しく付き合うことができ、他人の集積体である社会をも正しく理解することができる。社会と会社のありようを正しく認識して、社会に対して自分の倫理観に基づく善意の企てを画ることが出来る人間こそが、仕事を本質に向けて展開できる自立した社会人なのである。
仕事とは自分で作るもので、他人に与えられるものではない。哲学の在り処が違う他人が組み立てた仕事に携わるということは、それは"作業"として処理することを請け負っているだけにしか過ぎない。ある目的に向かってある領域で組み立てる"仕事"は、当然人によって方法論が異なってくる。個人の価値観が違うからである。このように、仕事とは本来非常にオリジナル性が高いもので、誰が担当しても同じ結果が得られるといった、現在の企業社会で一般的に捉えられているような匿名性の強いものではないということが出来る。
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