■生活を軸とした域内完結型循環社会の形成

 豊かな地域であることの証は生活の域内完結力の強さにある。住生活に関わる環境だけが極度に突出して憩いや働く機能を他地域に依存しているような地域は、豊かな地域生活を決して居住者に保障してはくれない。また逆に、ビジネスに過度にシフトして、生活が蔑ろにされている地域にも同様のことが言える。住んで、働いて、憩う。生活を支えるあらゆる機能がバランス良く域内に配備されている地域こそが住みよい地域なのである。

 私たちが自立した生活を手にすることによって地域は実態を回復し、そのことによって生活文化の醸成が図られるようになり、地域経済も円滑に推移するようになる。生活に依拠していない経済一元化情報に振り回されることのない、生活を上位に据える精神の規範力を養うことによって、絶対的基準が存在する生活上位の社会は始めて私たちの前に姿を現すようになる。

 そして、生活文化が花開き、地域経済が活性化することによって担保される"豊かな生活"は、より高次のレベルに向かって進展するようになる。つまり、生活と生活文化と地域経済は、地域を舞台に巡る一連の循環構造の下に存在していると考えることができる。属人的な体質の強い生活文化は人間が営む生活の実態化が図られないかぎり顕在化に向かうことはできない。生活の実態化が生活文化の顕在化と地域経済の実態化を促し、逆に、実態化した生活文化と地域経済は生活を更なる高次の段階へと導いてくれる。そして、高次の生活は更なる高次の生活文化と地域経済の活性を導くことになる。

 また、こうした環境の中で醸成されていく地域コミュニティは地域住民間の相互信頼が担保される高次の豊かさを育むとともに、同様に育まれる互助の精神によって、地域で生きるうえでの経済的負荷の低減にも一定の効果をもたらすようになる。このように、生活の自立は、生活文化や生活者同士の相互信頼、そして地域経済の活性と、豊かさを構成するあらゆるものが地域の中で循環する穏やかな自己完結型の社会を導いてくれることになる。

マス経済社会が誘導する「明日は今日より素晴らしい」という考え方の下に、私たちの社会は限りない拡大再生産の道を真っ直ぐに歩んできた。そしてその果てに私たちは帰るべき場所を見失ってしまっている。

私たちは、全てが相対の中で推移するマス経済社会とは別の、絶対的基準が存在し、且つ域内完結力の強い社会を目指すべきときを迎えている。それを、生活と生活文化と地域経済が一定の範囲の中で循環することによって内圧が高まりを持つことができる地域社会に求めるのである。


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