W章.地方自治体職員たちよ
行政マンは地域再生のコーディネーター




■はじめに

生活者が自覚を取り戻して生活に回帰することによって、地域は実態を回復することが出来るようになる。そして、自覚を取り戻した生活から生まれる様々な生活要求はリアリティを持つようになり、地域産業は顕在化する地域ニーズに対応する新たな事業領域を手にすることが出来るようになる。このことは疲弊する一方の地域産業の本質的な活性化策とも捉えることができ、地域との連携による地域産業の隆盛は、マクロ経済環境の悪化のなかで縮小する企業社会からの人材の積極的な受け止め策にもつながっていく。そして、生活と地域の実態化によって導かれる新たな日本の生活スタンダードは、次なる産業目標を喪失して閉塞状況にある我が国の企業社会にとっても新たな活路となる。

 現在の私たちの社会は消費社会とも呼ばれ、良きにつけ悪しきにつけ、具体の生活に最も強い影響力を行使できる機能を有しているのは企業である。生活者は地域の中で実態的に連帯することが出来ず、また、企てを業に出来ない中小の地域産業にも生活者に影響を与えるだけの力はない。その様な状況の中で、社会生活の多くの部分は企業社会の思惑によって推移してきた。しかし、企業社会が依拠するところは人間に奉仕することを目的としない、いたって自己目的化した資本主義システムにある。生活に奉仕する主体を欠いたこのような一種歪んだ社会構造の元に、何処まで行っても豊かになりきれない現在の私たちの社会の姿がある。

 人間を中心に据える二十一世紀の豊かな社会を目指すためには、産業の支援体制も取付けながら、生活を中心に財と情報とサービスが巡る循環型社会構造を地域という基盤の上に再び作り上げなければならない。そのことを生活者に、地域産業に、そして企業社会に働きかけながら、地域を巡るあらゆる循環システムを構築出来る立場にあるのが地方自治体なのである。

 地方の時代の到来に向けて、地方自治体職員は地域のコーディネーターを目指さなければならない。そして、地域生活の実態的な向上を目的として、生活者と地域産業と企業社会と連携を図りながら、"豊かさに向けての地域の経営"という新たな行政課題に取り組むのである。


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