■ローカル・トゥ・ローカル
しかし、一介の地域商業者が希少性の高い良品を全国から捜して仕入れるのは難しい。そのような活動を過去から堂々と行っている商業者もいるが、そうした店舗は地域商業衰退の時代にあっても総じて繁盛を続けている。
実は、こういった取り組みにこそ商店街連合組合や地方自治体の協力を仰がなければならない。例えば、海外貿易の促進策の一環としてJETROには「ローカル・トゥ・ローカル」という施策がある。この施策は、日本のある特定の地域と海外のある特定の地域を結んで、技術交流、産業振興、貿易振興を図ろうとしている。こうした施策の考え方を参考に、全国の農林漁業、地域の中小製造業との連携の下に、希少性が高くオリジナル性の高い商品の開発を誘導して地域に供給するのである。いわゆる国内版ローカル・トゥ・ローカルの展開であり、こうした小規模生産、供給連合との多重なネットワーク・チャネルの形成によって、地域商業の振興は新たな展開を展望することができるようになる。
商店街活性のための一つの基本は、生活の基礎である食を支える良質で安価な生鮮三品の品揃えの充実にある。肉、魚、野菜の新鮮な生鮮三品を扱う店舗が充実している商店街は客で賑わうが、そうした店舗が少ない商店街からは確実に客足が遠のく。しかし、生鮮三品を扱う商いは朝も早いし、またリスクも大きい。そのため、経営者の代替わりとともに魚屋が履物屋に変わったりと、知らず知らずのうちに商店街から生鮮三品を扱う店舗が姿を消していく。そして商店街から客足が遠のいていくのである。
余談ながら、商店街組合は生鮮三品を扱う店舗に商店街の賦課金の中から独自に補助金を出して、それらの店に生鮮三品の値段を下げて頑張ってもらうべきではないか。そのことが商店街の顧客を増やす最も直接的で効果的な戦略なのだから。
いずれにせよ、地方の市町村、及び生産組合との連携の下に、特にこの生鮮三品のダイレクトな流通を図ることは商店街の活性に直結する重要な視点である。更にいえば、こうした地域を巡るそれなりの流通チャネルの多重構築は、同じく規模の問題で悩む地方の農林漁業などの産業活性をも促す効果を持つものであり、我が国の東京一極経済システムとは異なる、地域を舞台とするもう一つの多重構造の産業ネットワーク構築に大きく貢献する可能性を秘めている。
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