兵庫県尼崎市南塚口町
敷地面積 : 657.32㎡
建築面積 : 388.04㎡
延床面積 : 1370.30㎡
構造規模 : 鉄筋コンクリート造6階建
スケルトン定期借地権とは定期借地権の一種である「建物譲渡特約付定期借地権」を応用して「100年以上の耐久性を持つ構造体(スケルトン)の住宅」を建てるしくみである。茨城県つくば市にある建設省建築研究所で開発された為、「つくば方式」とも呼ばれる。
スケルトン定期借地権マンションでは、入居後約30年間建物は入居者の持家となり転売も可能だが、約30年後に「建物譲渡特約」によって地主は建物のスケルトン部分を買取る。その後は賃貸契約でさらに30年間住み続けられる。またその際、土地オーナーの選択で「一般定期借地権」として後半の30年間を入居者の持家のままとする事も出来る。賃貸借契約に移行する場合には、入居者は建物の譲渡代金と家賃とを相殺し、より安く住み続けるこ事が可能となる。
定期借地権であるから安価に取得する事ができる。またコーポラティブ方式を採用しているため、入居者のニーズに合わせた住戸内設計が可能である。そして最も重要なポイントは、従来の分譲マンションが抱える最大の問題点を解決する方法論を提示している点にある。従来の分譲マンションは一般に30年目から35年目にかけてエレベーターや給排水管の前面交換といった大規模な修繕を行う必要があるが、費用が高額になるため合意形成を得る事が難しい。建替えへの合意形成も難しく、結果として放置されスラム化することが危惧される。
スケルトン定期借地権は大規模な修繕を乗り越えて円滑に修理を行う方法をハード面のみならずソフト面まで包括してシステム化したものである。具体的には30年目の地主の買取価格に建物の修繕状況を加味して増減する。大規模修繕を行えばその費用の1/2を買取り価格に加算し、修繕をしなかった場合には相当額を減額する。建物修繕については土地オーナーと個別契約するため住民の合意形成も特に必要としない。一般的に返還前のスラム化を避けることが困難とされている定期借地権で、インセンティブとペナルティを効果的に機能させることで、借地期間中に限らず返還後も健全な管理状況の元で入居できる、入居者・地主双方にとってメリットの大きい画期的な住宅供給手法である。
住宅金融公庫大阪支店を事務局とした「大阪まちづくり研究会」で。公開コンペが行われ本事業が選定され事業化することとなった。スケルトン定期借地権事業としては関西第一号となり、採用した等価交換は、スケルトン定期借地権事業における、複合化の事例として初めての提案と事例である。
公開コンペで提案したのは、土地を100%失わない等価交換プランである。
権利金を受け取った場合の地主の課税関係は、権利金の額が土地課税の1/2以下の場合には不動産所得として課税され、土地価額の1/2を超える場合には、譲渡所得として課税される。地主が定期借地権の設定の対価として、土地価額の1/2を超える権利金を受け取り、譲渡所得として課税された場合には等価交換が利用できると考えられる。本事業の地主は、既に相続対策を完了しており新規借入金を作る必要がなかった。一方で地主の息子が医院を開業する為の店舗の取得を希望していたため、これを無償で取得する方法としてこの等価交換を提案したのである。本事業提案が選定されたのは、そのような地主のニーズを的確に判断し、それに答える提案をすることができたからだと考える。
完全にスケルトンとインフィルの分離を図り、定期借地契約にその内容を反映させた。スケルトンは堅牢性と更新性を確保するように計画した。純ラーメン構造とし、耐震性を高める為靭性を十分確保し、将来における住まい方の変化に対応できるよう可変性を持つ計画とした。外装材は出来る限りメンテナンスフリーのものを選定し、設備配管等老朽化に伴い更新する必要のある部分は容易に更新できるよう計画した。インフィルは各入居者と個別に自由設計を行った。入居後トラブルに結びつく可能性のある内容については事前に説明の上、一定のルールを設定した中で個別設計を行った。配置計画は全住戸の開放性が最大限に発揮でき、かつ南採光が確保できる計画とし、将来周辺に建物が建ち並んでも住環境がスポイルされないよう配慮した。また、近隣に与える影響を出来る限り低減し、周辺で形成されていた良好な住環境の発展に寄与できるよう配慮した。