2.生活周辺産業の起業化の誘導
■新たな生活活性支援領域創出の必要性
地域産業の生活産業化を促すことによって地域生活のニーズに応えていける体制は作り上げることが出来るようになるが、地域生活のニーズは当然のことながら一定ではない。ニーズの充足は生活の高度化をもたらし、更なる高次のニーズを生みだす。そして、このようなニーズの高度化に基づく生活の段階的向上が、生活の豊かさを実感できる地域を具体に導く。
しかし、生活者とともに歩む新しい地域産業が、いつまでも生活者と共同歩調を続けていけるとは考え難い側面もある。その理由は、生活者が真に地域に生きる生活者として目覚めたとき、生活者が望むものは一般に流通している現在の消費社会のそれとは異なったものになっていく可能性が高いからである。既存の会社組織は変化に対応できる柔軟性がそれほど高くはない。会社という組織が潜在的に抱えている硬直性が、変化への対応の限界を生むのである。
一般的にいって、企業社会と生活者の間の財とサービスの需給関係は、企業社会サイドからの仕掛けによって発生しているものであり、生活者が望んで生まれたものではない。現在の私たちが目にしている消費社会は企業社会が望んだ姿であり、更に言えば、その財とサービスの既存の供給範囲が企業社会が対応できる可能性の範囲なのである。分かりやすい世界に閉じこもりながら、ただひたすら効率的に利益追求を続けようとする企業活動は、生活者の側から見れば今や充足率の低い隙間だらけの稚拙な展開になろうとしている。
そのような既存産業界の実態の中で、近年、「コミュニティビジネス」が地域に貢献力の高い業態として注目を集めつつある。これは、千九百八十年代にイギリスで発展した市民事業体の新しい形態であり、コミュニティに必要なサービスを市民の手によって推進することを目的としている。我が国においても地域コミュニティ実態化に向けての有効な手法として検討されだしているが、それを推進しようとする考え方の基本を一言でいえば、失速状況にある大手企業に変わる、スモールビジネスの集積化の振興による経済活力の維持にあるように思われる。
しかし、地域生活支援産業の基本は、推進主体の規模の問題にあるのではない。それは、現在の産業サイトの対応力の低さによって広がっている隙間を、誰がどのように埋めるかというところにあるのであって、地域生活に視点を据えて、地域生活の全方位性に対して対応力の強い、フットワークのよい事業活動を展開できる主体が求められているのである。
地域生活を正しく見据えたとき、そこに必要とされる新たな財とサービスは現在の産業社会の理解の範疇や、対応能力の限界から逸脱していく可能性が高い。従がって、高度化を続ける地域生活に真に対応していくことが出来る新たな生活周辺産業主体の創造・誘導が、生活の全方位性への対応力の強化という観点から必要となる。地域産業の生活産業化に次いで、地域の必然を見据えながら、より高次な生活要求に対応できる新たな主体が求められるようになるのである。
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