3.地域社会とマス経済社会との連携のあり方


■地域社会のマス経済社会支援領域

今後ともマクロ経済社会の健全な発展を期すためには、産業目標の多軸化と、それぞれの領域における、生活者から乖離することのない属人的な事業ノウハウの高度化が図られなければならない。そして、その推進のための環境整備策の一つが地域生活の実態化推進計画である。

社会に望まれる財とサービスを供給することを条件に企業は存在が認められている。ゆえに、望む側(消費社会)の実態が希薄なかぎり、産業社会の活力ある未来など望むべくもない。オルタナティブの社会としての地域社会を顕在化させることによって、生活は実態化を推進するためのプラットホームを確保できることになる。それはまた、マス経済社会の活力ある未来の実現を支援できる新たな社会環境の創造でもある。

 地域生活の実態化には、まず第一に内需の振興というマス経済支援効果がある。生活の実態化に伴う地域生活文化の醸成は地域経済の活性をもたらし、最終的に、マス経済社会の一方の目標である内需の振興へと繋がっていく。価値観が多様化した社会から生まれる様々な生活要求は、従来の効率至上主義の無機質な企業社会の発想では見いだすことができなかった新たな商品開発の視点を企業社会に提供してくれる。更に、そうした生活要求の集約・普遍化によって導きだされる新たな生活スタンダードは、明治以降、西洋文明へ適応を繰り返す中で喪失した、この国らしい生活様式の新しいあり方を呈示してくれることになる。

 第二は、マス経済社会と地域産業との水平分業による事業遂行上の様々な相互補完機能の誕生である。地域の実態化によって存在意義を取り戻す地域産業は、小さいが故のフットワークの良さと生活との共存体制を背景に、地域との連携が不得手な大手企業との水平分業を担うことができるようになる。そして、こうした地域産業の存在感の向上によって、これまでマス経済社会に全ての責任を押し付けてきた雇用問題も、地域産業との間で適切な分散化を図ることが可能になる。このことは肥大化したマス経済社会の適正規模に向けての縮小均衡を促し、マス経済社会の運営上の負荷の低減に貢献することになる。

このように、オルタナティブの社会としての地域社会の出現は、決して現在のマス経済社会に制約を与えるようなものでも、対立する構造を生み出すものでもない。それは、マス経済社会の今後の展開に恒常的な支援機能を発揮出来る新たな応援団の誕生を意味している。


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