■三十代の"気付き"の時代をどう生きるか

 二十代にやみくもに動いた経験によってなんとかイメージ出来るようになった社会に対し、仕掛けを実践出来るようになるのが三十代である。人は自らが位置する社会領域を実感を持って把握することが出来るようになったとき、初めて存在感が生まれだす。しかし、実際にチャレンジ出来る領域は、まだ二十代の時にあがいた範囲の三割程度でしかない。また、三十代の前半は当然のごとくに失敗が多い。というよりも圧倒的に成功の確率が低い。

 この時代に心がけることの一つは、経験則に押し流されることのない強い精神力を持つことである。多少なりと実社会が分かりかけてきた段階で、人間の行動パターンは二つに分かれていく。積極化の道と保守化の道である。仕事とは自分の生きざまである。仕事を方法論と捉えて自分の夢の実現を目指すか、会社の永遠性という幻想にすがって自分の定年までの人生を預託するかは、突き詰めればその人間の哲学の問題になる。

 また、失敗のリスクとは何かということに対する"見切り"も重要になる。独り善がりな行動によって会社に実害を与えるようではまともな社会人とはいえない。積極的なリスクは消極的なリスクよりもリスクは少ない。会社の要求レベル以上の展開を図る。またはそれを先取りする。その積極的な部分でのリスクは失敗しても帳じりは合わせやすい。また、リスクの中身は金なのか信頼なのかを把握して、自分で帳じりを合わせられる領域を拡げながら企てを拡大していかなければならない。

 この三十代に広げた実感の範囲が、今後の企業人として生きていく全ての可能性の限界になる。四十代以降になって三十代で広げたこの実感の幅を更に広げることは難しい。基本的には三十代のチャレンジ領域の幅の中にしか、四十代以降の未来は存在していない。



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