■四十代の"安定"の時代をどう生きるか
企業とは、入り(利益)と出(経費)の狭間を彷徨う、いたって不安定な組織体にしか過ぎない。その安定のためには入の確保、拡大化を図るための社会に対する恒常的な企てが必要になる。流行社会に対するたゆまざる変化の企てだけが企業組織の安定を保障するのである。
しかし、その構成員である企業人には、経験を積むにつれて往々にして"変化"に対する取り組みから離れて"安定"に向かいたがる傾向が生まれ出す。夢が薄れ、その代わりに経験則に裏打ちされた常識が頭をもたげ、企業人としての安定性が指向されるようになるのである。変化にはリスクがつきまとうが、安定は読みやすい。社会生活の積み重ねが、知らず知らずのうちに企業人を保守化に導くのである。
しかし、二十代のあがきと三十代の気づきを保ち続けてきた人間には、夢見るころを過ぎてもなお譲れないものがある。企業人が依拠する企業社会は変化を前提としており、安定は衰退でしかない。変化という企てを経験に裏打ちされたノウハウによって安定して展開出来るようになるのが、この四十代なのである。無論、三十代の時のような失敗はもう起こさない。二十代で耕し、三十代で蒔いた種を安定した力で刈り取っていく。そして、二十代の時に他人から自分に向けられた興味が、三十代での信頼、そして四十代の尊敬へと育っていくのである。
「一芸に通じるものは全てに通じる」というように、自己実現のための方法論である"仕事"を積極的に展開してきた人間は、この世代に入るとそれまでの経験や培われた知恵が自らの中で社会観として昇華するようになる。社会と仕事のありようや互いの因果関係が見切れるようになるのであり、それによって一箇の人間としての存在感は更に高まり、社会からの信頼感も一層増幅されるようになる。
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