■団塊の世代の課題
一九四〇年代後半に生まれた団塊の世代と呼ばれる世代は、ベビーブーマーの世代として人生の節目毎に常に新たな社会現象を巻き起こしてきた。受験戦争から高度経済成長を支えるモーレツ主義の会社人間。ニューファミリーを形成したら次はマイホームブーム。そして五十代を迎えた彼らが現在直面しているのがリストラの嵐である。
日本は急速な高齢化社会の進展が予測されており、二○一五年には四人に一人が六十五歳以上の高齢者になると伝えられている。そして、実はその二○一五年というのは、この団塊の世代が高齢者の仲間入りをするときを指している。常に社会に対して新たな社会問題を提示してきた彼らが、次に巻き起こす社会現象が高齢社会問題なのである。その後にはもう葬式と墓の問題しか残されていない。
現在、彼らはリストラの嵐の中を生きているが、いずれにしても二○一五年までには企業社会からリタイヤして地域社会に帰ることになる。そしてここにまた一つの大きな問題の出現が予測される。小さいときから激烈な競争社会を生きてきた彼らには友人が少ない。他人との協調性が低く、仕事人間で趣味もなかった大量の会社人間が定年とともに一挙に地域社会に流れ込んできたら、成熟社会の入り口でようやく萌芽期を迎えたばかりの地域コミュニティはどうなってしまうのか。会社を退職して地域社会に入ってきた男性の中には、会社時代の階級意識を持ち込んで平気で他人を見下すような言動をとる人間が少なくない。
議論好きだがクリエイティビティに欠け、何かにつけて意義を見つけないと気が済まない。五十歳を超え、何かをしておかなくてはと一種の強迫観念に嘖まれているが、かといって仕事や会社に替わる拠り所も見いだせない。そのような彼らを地域にどのように迎えるかは地域サイドの大きな課題となろう。そして、その事態はまもなく確実に訪れる。
また、団塊の世代側もまもなく訪れる定年後の第二の人生に向けての生き方を構築する準備を始めなければ、定年後も続く長い人生は単に長くて辛いだけの、まさに言葉通りの"余生"になってしまう。団塊の世代が今後どのように人生を処していくかは、彼らの余生の問題であるだけではなく、我が国の高齢社会における地域社会のコミュニティや生活のありように大きな影響を与えることになる。
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