2.地域生活のサポート体制の誘導


■生活周辺産業の誘導

 今後、人間を中心に据える生活上位の社会が現実化したとしても、生活実感から乖離した男性論理で構成されている企業社会が、生活理解に基づくこまやかな対応力を発揮することが出来るようになるとはなかなか考えにくい。しかし、今後の豊かな地域社会の実態化の推進のためには、既存産業の生活支援型産業への転換が不可欠な要素として求められる。したがって、それを誘導するためには、生活者サイドからも産業サイドに対して積極的な働きかけを行わなければならない。さらに、その働きかけを行う対象は既存産業社会だけに止まらず、生活により身近な、女性を中心とする新しい生活周辺産業の起業の誘導まで展望する必要がある。

京都のまちに見られるように、本来は地域が健全に存在していてこそ地域産業の存在意義は明確になる。地域あってこその地域産業であり、その実態が希薄な地域では生活情報も流通の支援も、フレキシブルな人材供給も何一つ産業側に呈示することが出来ず、その結果、当然のこととして地域産業は健全に育つことが出来ない。

地域生活の実態化を図ることによって自らの地域における生活仕様の定立を図り、産業サイドにその仕様を呈示して対応を要請する。地域で生活を共にする地域産業に生活産業への転換を誘導するためには、マーケットである自分たちの地域生活を産業サイドにとって一定取り組みやすく、ボリュームも間尺に合うものに整え直す必要がある。

 地域生活者が地域において個別の存在であり続けるならば、消費者は王様とおだてられても、地域という言葉がいかにもてはやされるようになっても、企業から商品を売り込まれる消費者の立場からいつまでも卒業することは出来ない。生活者が真の生活者として実態の回復を図り、地域の中でヨコのネットワークを組むことによってはじめて地域は主体性を回復し、顔の見える地域となって産業社会を誘導することが出来るようになる。


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