■地域生活応援団の誘導

 地域生活に密着して生活要求に応えることが出来る(可能性がある)既存産業体として、商店街や地場製造業などの地域産業を挙げることができる。そして、地域生活の実態化をニュートラルに支援すべき組織体として地方自治体がある。

 しかし、生活の支援体制を真に充実させるためには、既存産業が主体の支援体制を構築するだけでは恐らく充分とはいえない。経済規模の拡大によって社会は大きく拡がり、またそれぞれに深化している。そして、その結果、それぞれの社会領域の間には、幾つもの大きな隙間が存在するようになってしまっている。こうした隙間を埋める活動こそが生活の充実に密接に関連する重要な課題となるわけだが、組織の大小を問わず、会社組織というものにはどうしても自己目的化の体質から抜けきることが出来ない部分がある。隙間を埋めるという、既存領域から逸脱する新たな取り組みに関しては発想と行動に一定の限界が生まれてしまうのである。

 したがって、地域生活の実態化と充実のために真に対応力の強い応援体制を期待するためには、既存地域産業の誘導以外に自分たちの地域生活の向上にきめ細やかに対応してくれる、新たな生活周辺産業の起業を誘導する必要がある。そうした新たな生活周辺産業の起業を進めるための適切な人材の例として、第T章の第四節「しなやかに生きよ女性企業人」で述べた、男性論理の企業社会で生きるか、またはドロップアウトして外部からもう一度企業社会に攻め込むかを悩む女性ビジネスマンを挙げることができる。女性の生活実感をフルに展開できるビジネス領域として、この生活支援型ビジネスというニュー・ビジネスが適していると考えられる。

 こうした地域生活支援組織を地域の生活者たちがどのように誘導するか。生活と地域コミュニティの実態化を図ることによって、地域は顔の見える存在となり、地域の必然の強化、地域文化の醸成、生活枠の拡大に向けて地域生活支援組織の誘導が可能になるようになる。自らの地域の望ましい成熟の方向性を見極め、関連する組織の活性化を図ることが、真に地域の自立と主体性の獲得につながる地域生活活性の具体化手法であるということができる。


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