■異業種連携によるネットワーク型産地の創出

 組合などに代表されるように、企業は共通の言語を持つ同業者で横並びになって群れたがる傾向がある。しかし、同業者は競争相手でもあり、群れたからといって手を携えて活性化に向かうといったことにはなりにくい。所詮は互いに不況であることを確認して安心するといった、傷の舐めあい程度の話にしかならない。

 小規模企業が自立性を保ちながら活性化を指向するためには、同業者ではなく異業種との交流、連携が重要になる。技術力のある専門企業同士が水平分業を行い、ネッワーク型産地の形成を図るのである。中小の製造業が連携して商品開発を行う例は現在ではさほど珍しいことではない。全く新たな生活産業領域に進出するためには、更に、原材料の製造業、製品メーカー、流通業、小売業、それに企画や財務をサポートする企業などの、製品の製造から販売に至る全ての業種がネットワークする、地域を巡る新たな産業コミュニティの輪が構築されなければならない。

中小企業が製造から販売まで、全て一貫して自社の中で展開することは不可能に近いし、今の時代にそのような組織の肥大化に繋がる計画に積極的な意味はない。しかし、生活産業化という夢も、中小企業一社ではなかなか具体化させることは難しい。

今はそうした習慣は廃れてしまったが、かつての旦那衆の芸事、習い事は地域産業経営者たちの一種の異業種交流の場でもあったということができよう。一社では非力な存在でしかない中小企業が、小規模ゆえのフットワークを活かして何処まで異業種・異業態と協働できるか。共通言語が存在しない業界を横断して図る、地域を巡る産業コミュニティの再構築が中小企業の力を結集し、生活産業という新分野への取り組みを可能にする。従来は地域の中で個別の存在でしかなかった各企業を、生活産業化というテーマの下にネットワーク型産地としてまとまりを促すのである。

鯖江のめがね、東大阪の機械金属工業、神戸・長田のケミカルシューズなどの地域産業は、そもそも地域の必然や特性に沿って地域毎に特徴の異なる産業クラスターとして形成されている。産業クラスターはメーカーと呼ばれるような完成品を製造する企業ばかりではなく、その企業に特定の経営資源を供給している様々な中間財製造者や地域に存在する教育、情報、研究機関などによって構成される。そして、地域特性の現状に沿ったそれらの分布状況の違いによって、地域毎に特徴が異なる産業クラスターが構成されている。したがって、地域に存在する様々な地域産業やその他のストックを、地域が必然的に抱えている特徴に沿って産業クラスターとしてまとまりを促せば地域の産業集積の一層の高度化が図り得る。

 更に言えば、こういった領域にこそ、地域産業の活性化をもって地域を巡る財と情報とサービスの循環構造の構築を企図する地方自治体の積極的な支援を求めなければならない。地域産業だけで研究から製造、流通、販売までの完結力を持った産業クラスターを形成することは、現状においては不可能に近い。生活者を編成することによって供給の受け皿を創造し、そのことをもって地域産業の連携を促し、教育・研究機関も編成しながらネットワーク型産地の形成を誘導出来るのは、地方の時代に向けて、地域の自立性と主体性の確立を主要な業務とすべき地方自治体をおいては考えられない。


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