第3節.商店街を中心とした地域商業活性の考え方


1.商店街組織への行動力付与策の考え方


■商店街組織とは何か

 商店街の活性化をテーマとする会合は全国の商店街で頻繁に開かれている。しかし、そのような活動を眺めていると、その事業活性や収益力向上に向けて皆が一丸となって真剣に取り組んでいるようには決して見えない。大規模小売店進出の恐怖にさらされながらも、常に総論賛成、各論反対の中で議論はまとまらない。そのような商店街組織とは一体何なのだろうか。

 商店街を代表する組織として振興組合という組織がある。これは、振興組合法という制度によって認定されるもので、この認定を受けることによって商店街は法人格を所有出来ることになり、それによって行政の補助や融資を受けることが可能になる。しかし、この振興組合法というもの自体の性格に、私は商店街が活性化に向かわない基本的な問題点の存在を感じている。

 振興組合法とは、そもそも昭和三十四年に愛知県を襲った伊勢湾台風によって甚大な被害を受けた商店街を救済することを目的として生まれた制度である。単なる個人商店の集積体では公費を投入して復興を助けることは出来ないということから、この制度と組織化計画は生まれた。したがって、この法の基本を為す発想は至って公共的であり、現在の住宅行政のまちづくり事業に似た観点がその根底に流れている。そして、その体質は現在に至るまで引き継がれている。

 地域商業活性化というスローガンの目的を一言で言い表わせば、それは"もっと儲かる"ということに尽きる。小規模商店主の集まりである商店街の活性化は、各個店が一丸となって地域の消費動向を見極め、それに対する対応ノウハウを高め、より高次な商品やサービスの供給を続けることによって可能になる。そして、そのための戦略を立案し、各個店の活動支援を行うのが商店街組織の努めであろう。しかし、商店街組織は個人の自営業者の集まりであって、企業のように中間スタッフを多数抱えているわけではない。企業のように組織的に活動できる体制を有していないのである。結果として総論賛成、各論反対の中で大半の積極提案は立ち消えになる。

 その根本的な原因は組織の基本的な性格にあると考えられる。振興組合という組織の性格は前述の通りいたって公共的であり、営利事業集団には馴染みにくい部分が多い。元々、それは町内会的な性格の組織論にしか過ぎず、そのような組織が販売拡張に向けて一丸となって事業戦略を進めるということは、町内会が営利事業をしましょうと言っていることと大差がない。そのこと自体がそもそもリアリティのある話ではないのだ。


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