■活動推進力を付与する組織内組織化計画

 商店街において意見の統一を図れないもう一つの原因として、構成員個々の状況の違いによる意見統一の難しさが挙げられる。その立地特性上、商店街組織は街路に面する全店舗に参加してもらわないと運営しにくい面がある。したがって、全商店主参加の組織づくりを目指すわけだが、ここに大きな問題がある。構成員個々の属性が違いすぎる点である。

 商店街の生き残り戦略といったテーマの議論の中で、商店街の集約化による対応力の高度化の必要性とか、全体としての戦略展開の提案がよくなされる。しかし、商店街は株式会社である大規模小売店のような単体の事業組織体ではない。それは、いたって零細な個人事業者のたまたまの集積によって商業集積ゾーンのように映っている、個店の寄り集まった街路でしかない。したがって、商店街にはヤル気のある三十代の店主もいれば、将来投資を必要としない、後継者のいない七十代の店主もいる。そのような高齢な商業者に対して、組織活性化という大義の基に一律に活動のための新たな投資を強いることは正しいことだろうか。この積極展開の必然と消極展開の必然が交錯する組織構成が総論賛成各論反対の風潮を生み、最終的には若手のヤル気を奪い取っていく。

 この問題は別段商店街組織だけに限ったことではない。地域の数多くの同業種の組合で日常的に起こっている問題であろう。それは、それぞれ状況の異なる人間の集団に、町内会的、もしくは福利厚生的目的と、事業収益性向上という全く性格の異なる二つの目的を混在させることによって発生している。この問題を解決するためには、従前からの町内会的全員参加型組織の中に、新たな同志的結合による収益向上事業推進組織を設ける必要がある。この組織内組織化計画によって、従前からの緩やかな全員参加型の組織と多分に戦略的な組織の棲み分けによる両立を目指すのである。

 組織形態としては商店街の組合員全員の出資による株式会社(有限会社でも良い)が望ましい。これによって資本と経営の分離を図り、株主である商店街組合員全員の認知の下に有志による活動主体である事業会社を作るのである。そうした組織構造のおかげで、この事業会社の活動方針には日常的に組合員全員の意見の調整を求める必要はない。年一回の株主総会がその場となる。そしてその活動は商店街全体の活性を見通しながらの自分たちの収益追求活動とし、その企業利益は商店街の環境整備費に回ったり、出資者である組合加盟者に配当として支払われる。また、その専業従業員を商店主子弟や周辺住民のパートに求めることも、地域と一体となった商店街づくりの観点から重要な視点であろう。

 商店街をはじめとする地域産業者の団体は、所詮、生業を営む個人事業者の平面的な寄り集まり組織でしかない。であるからこそ、そこに事業活性化に向けての企業的な立体的活動を望むには限界がある。その平面的な組織に立体的な事業戦略組織を内在化させることによって、商店街の活性化に向けての能動性は初めて顕在化させることが出来るようになる。そして、具体的推進組織の誕生は、商店街と地域の同時活性化に向けて、地域との様々な人とモノと情報の交流を可能にする。


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